第36章 たぬき
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しばらく布団の上でごろごろして、
下に降りるともうストーブも着いててあったかい。
穂波はいつもの時間に起きて、
ある程度いつもの朝のことやってからまた、
布団に戻ってきたんだって。
だから、おれの腕は穂波がわざと乗せたって言ってた。
なにそれ、かわいい。
脚は?って聞いたら自動的に乗ってきたって言ってた。
ストーブの前のソファの向きを変えて、
テラスの方を見ながらぼーっとする。
結構、積もってるな。
『研磨くん、ご飯できたよ』
今日はパンだって、昨日決めた。
あんバターサンド、茹でブロッコリー、茹で卵、にんじんのマリネ、
ウインナー、カリフラワーのポタージュ、りんご。
「…これなに?」
真っ白いカリフラワーのスープの上に
ピンクの何か。 スパイス?
『それはピンク色のコショーだよ。その名もピンクペッパー』
「…ふ そのまま」
『今日窓の外が白くなってるのをみて、白いスープを飲みたいって思った』
「…ん」
穂波のそういうとこ、すき。
…すきじゃないとこなんてないけど。
ゆっくり食べて、穂波が洗い物するのをお茶を飲みながら眺める。
一緒に洗うときもあるし、
何回か… あれ一回だけかも、おれが洗う時もある。
でもこうやって、ぼーっとしたりゲームしたりするときも普通にある。
穂波とは堅苦しい、
息が詰まるような決まり事がないのがいい。
…って、これに関してはおれの働き次第かもだけど。
でも穂波はきっと、やりたくない、
今はできないって思うなら多分、やらないし。
ほんとにいつも、機嫌がいい。
『よし。 ちょっとスノーブーツ出してくる』
「え」
そんな本気な感じ?
『研磨くんのサイズもあるかな。 いやないよなぁ…』
「え、おれはいいよ。おれはストーブに薪をくべるから」
『…ふふ そうだった』
それから穂波は野うさぎみたいにぴょんぴょんと、
ガレージ上の倉庫に向かっていった。