第36章 たぬき
ー研磨sideー
追い焚きをして一緒に湯船にゆっくりと浸かった
今はベッドでごろごろしてる
「明日なにする」
『…何でもする』
「…笑 雪、積もるかな」
お風呂の窓から2人で、
雪がちらちら舞い始めたのをみた。
『積もってたら、小さくても雪だるまを作る』
「…ん、おれはストーブに薪をくべる」
『 ! 』
穂波はなんか嬉しそうな顔で目を見開く
『じゃあ、わたしは花をいける… 花瓶に…』
「…笑 なにそれ」
『…ふふ なんでもない』
それから穂波は父さんの部屋でよく流れてた、
前にギターを弾きながら歌ってた曲を小さく口ずさむ
Our House、だっけな。曲の名前。
心地いいメロディ、
なんかあったかいんだよなこの曲
それこそストーブの火の灯りが浮かんでくるような曲
それから穂波の柔らかくて落ち着いた声。
心地いい…
目を瞑ると、瞬く間に眠りの森に誘われていく
・
・
・
目が覚めると、今日は穂波が隣にいる。
起きてるけど、おれに背中を向けて本を読んでる。
おれの腕も脚も穂波に乗っかってて…
抱き枕にしてる状態
腰に回し腕にぎゅうと力をいれる。
『…研磨くん、起きた?』
「…ん」
するするとおれの方に向きを変えぎゅうと抱き返してくる
『おはよう、研磨くん』
「…ん、おはよ」
『…ふふ』
「なんか、明るい?」
『うん、雪、結構積もった。東京なりに』
「…あぁ」
だから、明るいのか。
雪が光を反射してこんなに。
いつもの朝ってなんだろ。
わかんないけど、
いつもの朝に彩りを与える、こういう変化。
…いいな。
どっちもいい。
いつもの朝も。
雪の朝も。
雨の朝も。
そばにいたい。
…ってアメリカの大学に行くためにいろいろしてるのが今の穂波で。
おれはそれを心から応援したいわけで。
矛盾してるけど、どっちもほんとだ。