第36章 たぬき

ー穂波sideー






「…ん。　まだ、だよ」






優しくも冷たい研磨くんの声
わたしを捉えて離さない琥珀色の瞳






奥を小突くようだった動きがまた
浅く深く出し入れするような大きな動きになっていく







「…ッ　あー　もぅ」






研磨くんは唇を噛んで眉を顰める






腕を伸ばしキスをせがむと
研磨くんの顔も身体も近づいてきて、
唇だけじゃない肌と肌がじっとりと、ぴたっと触れる







深く　甘く　そして余裕のない　けれども優しいキス







唇が離れたかと思うと
打ち付ける律動が速度を増す







『…ああッ　　んッ　んッ　…けッ　研磨くッ……』

「…ん　…ぁー」







耳元で響く研磨くんの小さな声、吐息

…でもまた、まだだめ、なんだろうな

もう苦しい
イきそうでイけなくて

いつもすぐにイっちゃうから
イけないで溜まってくのはおかしくなりそう

何度もイくと感度がどんどん上がっていっておかしくなるけど
こっちもこっちで感度があがってく

そしてまた違った感じに支配されてるような感覚に
なぜかこころも　身体も　疼く

そりゃそうか… こんなに優しくて色っぽい大好きな人に
優しく支配されてくのは　嬉しいに決まってる







「…穂波ッ」

『…んぁッ』

「一緒にイくよ？」

『…んッ』






それからまた研磨くんは身体を離し、
手をついてわたしの顔を見下ろしながら、腰を打ち付けた

せーのの合図みたいな声はなかったけど
高まってく波と研磨くんの身体に照準を合わせれば、
タイミングを合わせることなんて容易かった









ふたり見つめ合い、
吐息を漏らし、
息を荒げ、
声を発することなく一緒にイった








身体中の筋肉が弛緩する

ぼんやりとした意識の中、
研磨くんの脈動と
自分のナカの脈動だけを
はっきりと感じる






研磨くんの白欲が吐き出されるのを悦ぶように
わたしのナカがうねり、脈打ってる







「…すき」

『…すき』

「ほんとかわいい」

『………』






額や頬にくっついた髪の毛を優しく避けてから
ふわりとまた、唇が重なる