第36章 たぬき
ー穂波sideー
もう今日はいいや。
そんなこんつめるつもりもないし。
データを保存して、シャットダウン。
パソコンを閉じて…
お茶でも淹れよう。
「穂波」
『…ん?』
あれ、目が。
さっきと違う。色気増し増しだ。
「どこ行くの」
『…ん?お茶を淹れに。研磨くんも飲むよね。
お茶飲んで歯磨きして、上いこっか。なんか観る?」
「…わかんない、とりあえずお茶飲む」
『うん、ちょっと待っててね』
・
・
・
「…ん。うまい」
『うん、ほっこりするねぇ』
「ねぇ穂波」
『…ん?』
「ダンスの振りが難しい時」
『…ん?』
「どんな顔してるの」
『へ?』
「スケボーの技がうまくいかない時」
『…?』
「サーフィンでいい波が来てる、
でもちょっと自分には難しそう、でもいこうって時」
『………』
「どんな顔してるの?」
『………』
「………」
なんだろ、これ
「全部みたい。全部おれのにしたい。全部おれに見せて」
『………』
ふっと研磨くんの顔が近付いたかと思うと唇が柔らかく重なる。
そのまま次はぱくりと咥えられるようにキスされて
それから研磨くんの舌が艶かしく滑り込んでくる
優しいのに激しい…
胸が詰まって 苦しい。
息できるのに、息が… できない。
『…っはぁ………』
唇が離れる。
吐息が漏れる。
「…歯磨きしなきゃだめ?」
『…へ?』
「あとでいいよね」
『………』
「今すぐ、ちょうだい」