第36章 たぬき
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「…うまそ。 いただきます」
カレイの煮付け(小松菜も一緒に)、揚げ出し豆腐、長芋の梅サラダ、
にんじんと水菜とじゃこのサラダ、里芋としめじの味噌汁、ぬか漬け(白菜、牛蒡)
『はい、召し上がれ』
「穂波はさ、どうやって献立決めるの」
『へっ』
「…ふ 笑」
『んと、食べたいものが作れるときはそれに合わせて』
「作れるとき?」
『買い物に行けるか、あるものでか、買い物行った先にちょうど良いのがあるか、使える時間、予算…』
「うん」
『食べたいものが特にないときは…
一人だと適当だけど、食べてくれる人のことを考えると何かしら閃く。
買い物にいけるなら、店先で考えたりもする。 だから、その時々によって違う』
「…ん。知ってる」
『…』
「いつも楽しそうだよね」
『…?』
「じゃあさ、レッスン教えててついて来れない子がいるときはどうするの?」
『とりあえず…とりあえずある程度まで教えて、それから様子見ながらその子につく、かな』
「その子につききり?」
『うーん、つききりにはなれないけど』
「…」
『つききりっぽい状況を作る』
「ある程度まで教えるのはそのためだ」
『あ、うん』
「でも、逆にもっと置いてかれてる感じにはならない程度にってことだよね」
『うん、もちろん。 これも時と場合によって違うからなんとも言い難いけど』
「うん」
『…?』
「揚げ出し豆腐、うま」
『ねー揚げ出し豆腐ってなんでこんなに美味しいんだろうねぇ』
「…ふ」
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一緒に洗い物をしてくれて
ポンカンを食べながらエッセーの話になる。
「おれ、ざっくりしか読めてないけど…」
『うん』
「穂波は自分のクリエイティブなところを、楽しむとこって書いたのかな」
『…うん、そんな感じ』
「たしかに穂波はどんなことも楽しめるよね。
見つけ出すっていうか、なんでも、楽しそう。
合宿のとき、大量のプチトマトの皮むき?とかなんでこんな丁寧にできるんだろうって思った」
『…』
「でも楽しめるとこ、て表面的っていうか」
『…』
「そのもっと根本的なとこにある、穂波の思考の奥行きみたいなものかなって思う。
穂波のクリエイティブサイド」