第36章 たぬき
ー研磨sideー
『研磨くん、おかえり!』
日曜、半日練習を終えてそのまま穂波ん家。
…おかえりって。
「…ん、ただいま」
テーブルにはMacBookとノート、ペン、ブルーライトカットメガネ。
エッセー書いてたのかな。
それから、出汁のいい匂い。
心さんたちは、今日から10日間カリフォルニアに行くって。
アキくんの家に滞在して、それからそのまま3人で日本に帰ってくる。
アキくんは2ヶ月の短いシーズンオフとはいえ、
自分の会社のこと、スポンサーの商品のプロモーション…いろいろ多忙そうだ。
でも一日おれのオフの日に合わせて、ドライブしようって言ってくれたから
月末に2人で、どっか行く。
「…穂波やっぱおれ」
『えっ』
「え」
なんかすごい驚かれたら、おれまで少し驚いた。
『あ、ごめん。どうぞ』
「…ん えっと、学校ある日も穂波ん家泊まりたい。 …邪魔しないから」
『へっ』
「…笑 さっきからどうしたの」
『あ、いや…研磨くんがやっぱおれって言ったのに、
今日泊まってかないって言葉が続くかと思って』
「…なんで?」
『わかんないけど、唐突だったから』
「…ふ 笑 意地でも泊まってくから安心して」
『…ふふ。 うん。
学校の日も、研磨くんが邪魔になんてなるわけないから大丈夫。
お母さんと相談して、いつでもどうぞ。
あ、できたら木曜日はぜひ来て欲しいな』
「…ん」
…レッスンも、クロの英語教えるのもない日。
『お風呂先入る?ご飯にする?』
………あーかわいい。
「…お風呂、一緒に入ろ」
『うん、入る。じゃあ、ラクにしててね。今いれてくる』
ストーブの前に座ってぼーっとする。
幸せぼけってほんとにあるんだろうな、とか。