第36章 たぬき
ー研磨sideー
「自動的に研磨さんってのはフェアじゃないと思います!」
クロも夜久くんもいないし、
こういうこと言い出すのは一人しかいない。
リエーフだ。
「…別におれじゃなきゃだめとか言ってないし」
「い、いやでも、やっぱ俺はな、そのだな…」
虎が穂波とおれが組むようにって言っただけだし。
「研磨さん!俺、灰羽くんとは理由違うんですけど、
俺も穂波さんとストレッチしてみたいです」
「俺も!」
芝山と、犬岡。
「…いやだから、おれは別に」
「じゃあ、恨みっこなしでじゃんけんで決めましょーよ!」
「おっ俺は遠慮しとく…」
「あ、虎。 虎が遠慮してくれてる気持ちは分かるんだけど、
穂波多分普通に上手だからさ、いいと思うよ。経験しとくの。
あの影山が御用達にしたいって言ってるくらいだから」
「御用達?」
「海外にもついてきて欲しいって」
「いや、規模!もう世界見てんのか! …でもまぁ、見るか。あれだけの才能があれば」
…そんなわけでじゃんけん。
結局虎も、それから球彦も参加して。
おれはさっき負けて、今残ってるのは2人。
犬岡と福永。
…どっちでもいいけど、
一回やってもらってる福永が譲らないのが地味におもしろい。
猫みたいに気持ちよさそうな顔してたもんな…
あれももう1年以上前か。
「よっしゃああああ!」
『お疲れさまです。 …ふふ、じゃんけん大会?犬岡くんの優勝?』
「うん」
『すごい喜んでるね。 何か景品があるの?』
「…穂波とペア組む権利」
『えっ』
「なんか、じゃんけんすることになった」
『…なるほど』
「穂波さん!俺、今日ペアっす!お願いします!」
『うん、お願いします。ゆっくりやろっか』
「ありがとうございます!」
安定の犬岡と穂波。
やっぱり見てて、安心する。