第5章 夏
夜久「…俺らはともかく、これからも絶えなそうだよな〜
でも本人達はあんまり気にしてなさそうで平和。」
クロ「そうそう、穂波ちゃん俺らは眼中にないしな〜それが気楽なんだよな。
あれで気の多いタイプの子だったらお互い流されちゃいそうだけど。
でもちょっとカズくんだけ、さっきの聞いたら長いスパンで見て強敵に思えてくるわ…」
夜久「しかも研磨にも懐いてるっていう 笑」
クロ「…それなー」
遊児「………」
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ツトム、穂波、研磨の3人が戻ってきて、
ツトムの提案でみんなで写真を撮った。
日が沈みだし、空が段々赤くなる。
そろそろ帰る、と誰かが言ったわけでもないのに、
自然とそこにいる皆にそう感じさせる夕陽の力
突然、穂波が波打ち際に向かって走り出す。
履いていたサンダルは、研磨の足元に転がっている。
波打ち際で真っ直ぐに立ち、少ししてから腰を真下に落とす。
足元に寄せては引く波を受けながら、
穂波はフラを踊り始めた。
皆がフラダンスと聞いてぱっと浮かぶ、アウアナ、現代フラ。
広げたり閉じたり流れるようなハンドモーションと
常に波のように揺れる腰。動きに沿ってなびく髪。
揺れるスカートを履いていなくとも、その動きは十分に美しく、
誰もの視線は釘付けだった。
波の音、海の向こうに沈む太陽、潮の香りを孕んだ風、
陰ってシルエットのように映る舞姿。
10分程度の舞だったが、見るものにはまるで永遠のような時間だった。
穂波が舞を終えると、
海の向こうから一際強い風が吹いた。
穂波の頬を、身体を、包み込むように。
風は髪を持ち上げ、髪は戯れるかのように揺れ動く。
風が止むと、穂波は両手を広げ、
その腕をゆっくりと動かし胸の前でクロスさせた。
くるっと振り向き、何事もなかったかのように皆の元へと走ってくる。
先ほどまで纏っていた神々しいとも言える空気はどこかへ行き、
晴れ晴れとした笑顔で戻ってきた穂波に
息を呑むよう黙っていた皆も、綻び、いつもと変わらぬ空気になる。
『…あー、楽しくって幸せな一日!』
研磨の元へ駆け寄ると
穂波は勢いよく抱き付いた。
「…ん」