第35章 fun
「あれ、照れてる。 かーわいー。 あれ、俺脈あり?」
『木葉さん、良い試合を見せていただきありがとうございました』
「…なんでそんな丁寧語 笑 ハグしてー? ぼすんって、思いっきり」
『…では、失礼いたします』
なんだか妙に緊張するな、木葉さんはだって、どうにもこうにも色っぽい。
広げられた胸の中にぼすんっと飛び込めば
腰にするすると慣れた様子で腕が周り片手は、そうお尻の上。
きっとこれはわざとじゃなくて、多分、もう癖?
そういう人、普通にいるからそれは別にいいんだけど…
今ちょっとどきどきしてたから、それを加速させられる
「…うわ、すげーかわいい顔してる。
ほら、赤葦このくらいやんないと振り向いてもらえないよ」
「…このくらい、とは」
「…抱き返し方っつーか、触れる場所っつーか」
「………」
雪絵さんやかおりさん、梟谷のみんなに挨拶をして、
ありがとうを伝えてってしてると…
「…あ、梟谷の奴らがいるぞ」
大地さんの声が聞こえたかと思うと、
ぞろぞろと烏野のみんなが荷物を持って歩いてくる。
みんな、みんなに、また挨拶とお礼を手短に。
翔陽くんと仁花ちゃんはいないけど…
『蛍くん』
「はい」
『かっこよかったです』
「………」
『ありがとう、ほんと、感動した』
「…スノボ」
『………』
「スノボ、いきましょうね。 春高後って、約束してたんで」
『うん!調整する!また連絡するね』
「はい、僕からもまたします。 会えて嬉しい」
『………』
「 ? 」
『やだ…』
「はい?」
蛍くんすっごいかっこよくなってる。
試合前に会ってないからわかんないけど、これって、試合によるものなのかな?
うそどうしよう、あれこれスノボ行っちゃまずいかも…
『アザラシ…』
「は?」
「ぶっ…笑 ごめん盗み聞きとかしてないんだけど
いま穂波ちゃんアザラシって言った?」
『…あ、うん』
「あはははは…! ほんとそうだよな、マジこいつらアザラシかって感じだよな!」
大地さんがすっごい笑ってる。
そして…
『蛍くん、その、顔………』
怪訝さマックスの蛍くんの表情。
あぁ、愛おしい人たち。