第35章 fun
研磨くんが立ち上がってどこかへ行くのが見えた。
どこかじゃない、翔陽くんのところ。
なにを話すでもないんだろうけど、
きっと翔陽くんを励ましに。
「日向翔陽!!俺は!!お前を待っている!!!」
鴎みたいな目をした人が翔陽くんに言った。
待ってる。
インターハイ、来年の春高…
それとも、もっと先だろうか。
かっこいい人だな。
ほんとに強い人だ。
そうだな、鴎台の人たち…
というか幸郎くんと、この5番の人はなんだろう。
強い。
何か大事なことをとうにわかってるんだ。
そんな強さがある。 惹きつけられる。
そしてこういうとき影山くんはどんな顔してるんだろう。
きっと、すごくかっこいいんだろうな。
え、ツトムくん、撮ってるよね、撮っててね。
ってわたしのために写真撮ってるわけじゃないけどさ…
影山くんはきっと、こういう時すごく冷静だ。
どう言葉をかけよう、とか
落胆、とか 悲観、とか 同情、とかじゃない。
真っ直ぐ、冷静だ。
翔陽くんに対して。影山くんのままで。
そのままの関係性で、きっと。
あぁ、ほんとにいつまでも見ていたい2人だな。
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あぁ…すごい、すごかった。
蛍くんもずっと全力だった。
一度コートの外に下がったけど、
足を攣ったのかな…
でもすごい、14-18から
23-25まで追い上げたんだもん。
あああ…だめだ
また、涙が…
「ぅわ… また泣いた」
『放っておいていいから…』
「…俺な、割合淡白な方とは思うけどな」
倫ちゃんはそう言って
半ば強引にわたしのことを胸に抱き寄せた
「泣きやませたいとかは、まぁ、思うよ」
『…うう 鼻水と涙とよだれでよごれるよ』
「なんでよだれまで出しとんの。鼻水と涙はいいけどよだれはやめてや」
『…ふふ 笑』
それからわたしの涙が落ち着いた頃合いで身体を離し、
倫ちゃんともLINEの交換をした。
「いや、俺もキスしたいけど… 俺は多分止まれん。
トイレとか連れ込んでまうからやめとくわ、ここで」
『…へ? キス?』
「あと、双子のファンに刺されんように気ぃつけて」
倫ちゃんはそう言ってスタスタと去っていった。