第35章 fun
ー穂波sideー
「俺、話しとってもええの?」
治くんの声がなんだか、所在なさげ。
『うん、もちろん。あ、でもわたしが先にしゃべってもいい?』
「俺は 一本の指に入るエースだ!!!!!」
………。
会場に響き渡る光太郎くんの大きな声。
『…ふっ 笑』
「一本の指に入るってなんやねん。日本語おかしいで」
『あはは、ほんとだね。笑』
ツッコミっていいなぁ。心地いい。
あ、つっこみといえば…
『へいへいへーーーーい!!!』
ツッコミではないけど、
いつかしてみたいへいへいへいツッコミの大元。
客席から光太郎くんの元へ!
大きな声を出してみれば、
ばびゅっとこちらを振り向き、
両腕を天井に向かって力強く掲げ、
本家本元きらきらのそれが返ってくる。
「へいへいへーーーーーい!!!」
どっと湧く会場。
やっぱり初めてモールであったときの印象そのまま。
光太郎くんは、スターだ。
敵も味方もない、みんなを惹き込む。
「いやいや穂波ちゃん、
4番すごいなぁ、流石やなぁみたいな顔しとるけど、
穂波ちゃんも大概やで。なんなん、ほんまに」
『…ふふ。それもひっくるめて光太郎くんのパワーなのです』
「…よぉわからんけど、話持ってかれたんだけはわかるわ」
そうだ、話してもいい?って聞いたとこだった。
試合を眺めながら、話したかったことを話す。
『……そんなわけで、梟谷のみんなも烏野のみんなも知り合いなの』
「…ふーん、そうなんや。何でそんなん俺に話そうと思ったん?」
『…なんとなくかなぁ。今一緒にいるのは治くんだし。
それで隣でわたしがきゃほーって光太郎くんたちにしてても、なんだかあれでしょ』
「…なんだかあれ、な。 …おおきに。俺のこと気遣ってくれたんやんな?」
『気遣いだなんてそんな。 ただ話したかっただけ。 あ、あとねもう一つ』
「…その前に一個聞いてもええ?」
「ナイスレシーブ!」
光太郎くんは狢坂のエースの人のスパイクを
胸で受け止めて、
それから自分で自分を称賛した。
ほんと、ナイス。
すきすき。