第35章 fun
ー穂波sideー
研磨くんがちょっと…いやだいぶ寂しそうだ。
多分、翔陽くんを攻略できそうなことが、悲しいんだと思う。
試合の勝敗にはあまり興味がない研磨くんだから。
この試合に勝つとか負けるとかそういうことじゃなくって、
すっごく面白くて大好きな翔陽くんを攻略できそうなことが、うん。
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…でも、今。
研磨くんの空気がまた変わった気がする。
わくわく顔の前の段階かな…
翔陽くんがレシーブして、そのまま助走入って飛んで…
でもトスは龍之介くんに上がったんだけど、
でも翔陽くんの全力のジャンプは最強の囮であって…
っていうかきっと翔陽くんは囮のつもりでとんでない、よね?
どうなんだろう、わかんないんだけど、
とにかく龍之介くんへのブロックは一枚半で、
でもそれも夜久さんが返して…
結果的に翔陽くんは汗ですべって飛べなかったんだけど…
きっと翔陽くんはここで、躓かない。
普通ここって心が折れる人も多いとこだと思う。
確実に自分の動きを抑えられてて、思うように飛べなくて、
タッチネットとかミスもして、ブロックにスパイク阻まれて…
その上、いまチャンスのタイミングで攻撃に入れなくって。
でも、翔陽くんだもん。太陽みたいな翔陽くん。
それから、いつだってもっともっとって飢えてる、翔陽くん。
…だからきっと、研磨くんはまたわくわくする。
さっきよりもっと。 もっともっと生き生きとした顔をするんじゃないか。
…それに烏野のみんなもきっと
翔陽くんのために道を開けたいって思ってて。
それは、特に、影山くんにこそ色濃い思いであって。
あの強気でいて、どこまでもバレーに真っ直ぐな影山くんだ。
きっと何か……
『…あぁ………』
泣く………
翔陽くんに、 ほら、飛べよ。 って言ってるみたいな、
センターオープンの高い高い、トス。
なんだろうもうよくわかんない。
もともと勝敗にわたしも興味がないとこがあるんだけど…
そういうんじゃないもう、どっちもすごい。 …いやそれもいつもなんだけど
…でも、なんだろう。
ほんとに、ドラマティックすぎる。
選手の一人一人みんなのことを知ってるから…なのかな。
涙が、ぼろぼろ出る。