第35章 fun
ー穂波sideー
ひとときも目を離したくない。
研磨くんだけを観れたらいいのに。
でもそんなわけなくって。
みんなのことを観ていたいから無理ってなる。
音駒だけじゃない、烏野の誰一人の動きも見逃したくない。
瞬きするのも、息をするのも惜しい。
海さんのレシーブ、研磨くんのセットアップ、リエーフくんの高い速攻…
夕くんのトス、旭さんの強烈なスパイク…
烏野みんなでのシンクロ攻撃、クロさんのどシャット…
山口くんのサーブ、蛍くんのブロック…
あああ…最初っからすごすぎて目がしぱしぱする。
そして何よりみんなすっごく楽しそうで。
そのリラックスした空気とは矛盾して 空気の張り詰める怒涛のラリー
引き込まれる。
目を離せるわけない
音駒の試合ではよく観ることではあるけれど
息をのむほどにすごいラリーを繰り広げながら
クロさんのスパイクが決まって25-25。
このまま永遠にどちらもブレイクせずに続いてくんじゃないかって気がしてくる。
そしてそれを永遠に見ていられる、見ていたいなって
まだ1セット目なのに。
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旭さんの強烈なスパイクを夜久さんがあげる。
でも、ネットに近い。
研磨くんはツーで押し込もうとして…
蛍くんがネットの向こうから手をにゅんってして、逆に押し込まれる
烏野の得点かと思ったら…
音駒の得点?
26-25。
「やりよるやんけ、穂波ちゃんの彼氏」
隣で侑くんが呟く
…どういうことか聞きたいけど
今は話してる場合じゃないってなっちゃう
海さんのサーブ、旭さんのスパイク、
山本くんのレシーブを夜久さんとクロさんが繋いで烏野に返す。
夕くんが綺麗に影山くんに返して、またシンクロ攻撃。
大地さんのスパイク、山本くんのレシーブ、
ネットに当たったのをクロさんがフォロー、
それを研磨くんが最後、烏野に返す………
『ひゃあ…』
「…くそ」
「ちっ…」
烏野のチャンスボールになるはずだったそのボールは
烏野コートにだんっと落ちた。綺麗に。
…これがまぐれなわけない。
何がどうとかはわからないけど
研磨くんが意図してそこに返球したことだけはわかる。
27-25。
1セット目、音駒先取。