第34章 knit
なんていうかあれや
自分のこと当たり前にしながら
俺についてきてくれそうや。
一緒にする作業も別々にする作業も
全部ひっくるめて一緒にしてるって思えそうや。
ええなぁ…
『北さんも信介さんもお会いできて嬉しかったです。
北さん、また電話するね。そっちの方行ったら必ず連絡する』
「うん、電話してなぁ。いつでもええよ」
『信介さんも、お話し楽しかった。ありがとう』
「うん、こちらこそ。ありがとう」
それから穂波ちゃんは
あ、そういえば!
と言って、鞄の中から小箱を取り出した。
なんや百貨店とかに売ってそうなチョコレートが入っとるんかないう箱。
それを開けるとワックスペーパーに飴ちゃん包みされた何かがいくつか入っとる。
『きな粉飴、もしよかったら。 歯にくっつくけど』
「…きな粉飴。 でもこれ、そないな箱と違かったやろ」
そこそこ高級そうな箱から
えらい庶民派なもん出てきよった。
『あはは、バレたか。箱綺麗だったから、お父さんからもらった。
中身は米飴ときな粉のみで作ったきな粉飴』
「もろてええの? ばあちゃんはどうする?」
「わたしもひとついただくわ。おおきに」
『うん、なんなら箱ごとあげたいけど迷惑だよね』
「箱ごともろてええんなら、もらうけど。 でも大事な箱なんやろ?」
『うん。大事な箱』
「やから…」
『だから、もらってもらえるなら嬉しいんです』
「………」
『…どうでもいいからあげるなんてしないですよ』
「………」
『いや、大事だからあげれないものもあるか。…いっぱいあるなそれ』
「…ふ 笑 ほんまかわいらしい子やな。ほんなら、遠慮なくもらうで」
『うん、もらってください。 じゃあ、また!』
笑顔でそう言って
ぺこりとお辞儀して
ささっと去って行った。
去り際もあっさりしとって、好きやな。
「穂波ちゃん、ええ子やろ」
「ええ子やな」
「はよ、信ちゃんの晴れ姿がみたいなぁ」
「………」
ばあちゃん、俺まだ高校生やで。
流石にまだ無理なんやて。
結婚するにも順序ってもんがあるしな、まずは養う力つけなあかん。
…ってばあちゃんからの
穂波ちゃんへの含みにはなんの違和感もないってなんやこれ。