第34章 knit
…ひゃあ。
ナンパみたいなことしちゃった。
旅先でもたまにしちゃうんだよなぁ、これ。
時折、引き止めずにはいられない出会いがある。
場合によっては逆ナンってやつだよなぁ…
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音駒高校VS早流川工業高校
石川県代表の早流川高校の監督は、
猫又監督の教え子さんらしい。
もう、長い長いラリーが毎回続いていてはらはらどきどき。
…今日は研磨くんがよく動く。
いつもは研磨くんのいるところにボールが返るのに。
「なんで?ていうか私から見たら十分凶器アタックなんだけど」
「もちろん決めるとこは決めてるし、弱い攻撃ってワケじゃ全然ないよ。
コースもキレキレだし。 音駒だからあんなに拾えてるだけで」
…お、ちょっとこれは助かるかも。
後ろの席にいるカップル、かな?がちょうど解説っぽい感じに。
昨日もだけどカズくんがいないから、ついていけない部分が多かったんだ。
しっかりコートを見ながら、後ろから聞こえる声に耳を傾ける。
もっと聞かせて!
「音駒の守備はハイレベルで“ちゃんとハマった攻撃”でも拾いやがるのね。
だからかはわかんないけど
早流川の方には【決めるより音駒のリズムを崩そう】って感じが強く見える」
…ほぅ
「拾われたら駄目じゃん?」
「うん、決定打にはならない。目的は多分──」
………。
「セッターを走らせること」
へっ。 えっ。 だから、研磨くんは走ってるってことなの?
がばぁっと後ろに振り向いて質問しちゃいそうになる衝動を抑える。
…でも、音駒が、研磨くんがその作戦に気付かずにいるとは思えない。
そして、気付いていながらただ走り続けるなんてこと、するとは思えない。
研磨くんの頭の中には今、どんな絵が描かれてるんだろう。
…ってそれどころじゃないかな。
はぁ…ふぅ…1セット目は先取した。
2セット目が始まるまでにいろいろ思い出してみる。
…んー。 んー? んん?
2回目のタイムアウト以降でちょっと変わったとこがあるような。
ないような あるような…
ちょっと、わかるような、全然わかんないような。
これは、第2セット観ながらだ。