第34章 knit
「そうなんよ、編んだんよ」
…ほっこり。
もう、ほっこりしてますわたし。
その笑顔と柔らかいほっぺと…
あぁ… すっごく安心する、このお方。
ずっとそばにいたくなる。
たまにいるんだ、そして必ずわたしは動けなくなるのだ。
何を喋るでもするでもなく、そばにいたくなる。
キラキラしてて、永遠みたいな、一瞬の集合体みたいな…
刹那的で、でも今も昔も変わらない感じがして…
胸がきゅうとしながらもすっごく安心するというか…
「最初はな、英語にしようと思てん。
かっこええやろ、英語」
『…ふふ、うん』
「でもな、文字多なって大変やな〜思て、漢字にしてん」
SHINSUKE GANBARE…?
GOOD LUCK SHINSUKE…?
GO FOR IT SHINSUKE…?
『漢字の方がかっこいいと思います』
「ほんま〜!?」
『うん』
「信ちゃんにもな、そう言うてもろてん。
せやけど、若いかわいい娘さんにもそう言うてもろたら、益々嬉しいわぁ」
『…ふふ 信介さんっていうんですね。
すごいなぁ、そんな綺麗に真っ直ぐ文字編めるなんて。
わたし編み物憧れてるまま、ひとつもできないままで…』
「続けていればできるようになるよ。
…でもな、東京暖かかったら着られんやろ、寒いとええなぁって思っててん。
今日寒くてよかったぁ〜」
…あああ きゅん。 きゅんがすごい。
『えと…お名前お伺いしてもいいですか?わたし運天穂波です』
「穂波ちゃん。かいらしい名前やね。私はね、北いいます」
『北さん… あの、応援してる学校の試合が始まるんで行かなきゃなんですが…』
「あら、お時間おとりしてもろて…」
『ううん、違うの。 あのね、試合の後お時間あるなら是非…んーと、』
「うん、お話したいね。孫が稲荷崎いう高校でバレーしとるんよ」
『…稲荷崎』
「それ応援したら時間あるから、見かけたら声かけてね」
『うん… あ、えっと はい! 嬉しい。
じゃあ、えっと… あ、稲荷崎の応援の場所とかはわかりますか?』
「応援団の人たちがよぉけおるからわかるよ、おおきに」
『…ん、じゃあわたし用を足してから出ます。また、きっと!』
「うん、またね、穂波ちゃん」