• テキストサイズ

【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第34章 knit


ー穂波sideー






音駒の試合観戦前。
トイレを済ませておこうと、
洗面所に入ると水道周辺が結構荒れてた。

髪の毛がいっぱい落ちてるし、水も飛び散ってる。
ペーパタオルの紙屑や小さなゴミが床にぽつぽつ落ちてる。

いろんな人が使うからね、こういうこともあるよね。
気になったのでとりあえずまず、
シンク周辺に落ちてる髪の毛を取っていく。
ゴミ箱に捨てて… 水を拭くよりまずゴミだよね。
次は床のゴミを拾っていく。

トイレから水が流れる音がして、
邪魔しないようにしないとなぁと思いながら
でもまぁ広い会場のそこそこ広めのトイレだし、
かがんだままちょろちょろとゴミを拾った。






「髪の毛も拾ってくれたんやね、おおきに」




静かで穏やかで澄んだ年配の方の声。
はっとしてその声の方を見上げると、
佇まいの美しい、
ちいさくてかわいらしいおばあさんがそこにいた。





『いえ、とんでもないです』





ゴミを拾い終えて、起き上がりゴミ箱に捨てる。
おばあさんは慣れた手つきで、無駄なくささっと手を動かす。
全体の動きはゆっくりして見えるのに、
手の動きは素早いというか… そう、とにかく無駄がなくて…見惚れてしまう。
宮城のおばあちゃんみたい。

はっ、見惚れてる場合じゃない。
わたしも、水拭くとこまでやっちゃおう。
おばあさんがシンク周りの水を拭いてくださるので、
わたしは床の水をペーパータオルを少し使わせてもらって拭いていく。
わたしのそれは決して丁寧ではないけど…







「…綺麗になったね、おおきに」

『いえ、もうほんと、こちらこそありがとうございます』






その身のこなしを見ているだけで、
いや、動かずともその佇まいを見てるだけで、
今までおばあさんが毎日されてきたこと
積み重ねてこられたことを垣間見るようで、心が洗われます。






…そしてもう一つ。

さっきのは心の中で言ったというか、ありがとうの言葉に込めた気持ち。
それからもう一つのこっちは、口に出さずにはいられないこと。







『セーター、編まれたんですか?本当に素敵』








/ 1804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp