第33章 求肥
ー侑sideー
角名とロビーでなんとはなしに時間潰しとったら
目の前を見覚えのある子が通ってった。
…ん?
稲荷崎の応援の人とちゃうし…
うそやん、あの子やん!
階段を登り出したあの子を、
とりあえず走って追いかける。
会場入ってまうとうるさいからな…
その前に声かけな。
「…もーどこ行っとってん。探したんやで」
またな、あん時みたいにぽんぽんぽんって話してくつもりで、
テキトーなこと言うて肩に手を置いた。
…ら
『侑くん!』
俺の顔を見るなり、
ひまわりみたいな笑顔で笑ってそれから
ぼすんって俺の身体におもっきし抱きついて来た。
なんなんこれ。
予想外すぎる。
どこに手ェやったらええのん。
ええ匂いするし。
ずっと抱きついとるし。
話しながら身体、離さへんし。
あーもう無理や!
このまんまやと、今はあかんとこまで反応してまう!
「 てゆーかもぉ離して…」
情けない声でてもーた… しょぼ…
そしたら俺のこと見上げながらなんで抱きついてしもたんか話し出して
それはええんやけど、
なんでから知らん、いきなり目の前でもじもじしだした。
なんなんそれ。
思っきり抱きついて
やらかいとこ俺の身体に押し付けて
けろっと会話してたくせに
今はもじもじ顔赤らめて…
ずるっ
その計算やない緩急にたじたじになってまうやん。
ほんでもだんだんペース取り戻して
前みたいに話せるようになってきたのにな、
それなのに、やで。
『だーかーらー ね? そもそも適当ではないの。 はい、一旦この話おしまいね?』
その、首傾げながらお願い事みたいなんするん反則やって、マジで。
「だーかーらー! それあかんってゆーてるやん! 反則やって」
『…ねぇ、侑くんの学校はなんて学校?』
「…稲荷崎やで。応援してくれるん?」
『…うん、もちろん』
「ほんで、自分はどこの応援なん?っていうかどこの子?」
『…んーとねぇ』
…なんなんいきなり、言い渋るやん。