第33章 求肥
ー穂波sideー
稲荷崎って、シード校で…
もしかした場合音駒の対戦相手になるとこだよねぇ。
…なーんか、侑くんに知られると厄介そうだなぁ。
出し惜しみするわけじゃないけど、
今はまだ言わなくっていいや。
「じゃー当てたるわ。 東京と見せかけて千葉とか?」
『…ふふ。なんで千葉だと思うの?』
「よぉ焼けてるし。 サーフガールって感じする。 なんかスポーツしてんの?」
『お!大正解! サーフィンしてるよ』
「よっしゃー 正解したでなんかちょーだい」
『…笑 何が欲しい?』
「君の心」
『…笑』
「ええ?」
『いいかダメかと聞かれたら、別にダメではないけど』
「マジで!?ほんまに!?」
『ダメではないけど無理かな』
「なんなんそれ、上げて落とすやん」
『いや別にそんな上げてないから 笑』
「…俺好きやで、君のこと」
『…ほぉ』
「彼氏おんの?」
『うん』
「奪ったるわ。 心奪ったる。 試合観とれや」
『おぉ…』
すごいなぁ…
こんなセリフが似合う侑くん、すごい。
さっきまでニコニコしてたのに、
いきなりすごい、真面目な顔になるし。
試合中はこんな顔するのかな。
『…ん。 楽しみにしてる。 あ、えっとね』
「………」
『わたしの名前、言ってなかったね』
「…せや、また忘れるとこやった。名前なに?」
『穂波です。改めまして、よろしくね、侑くん』
「…なぁ穂波ちゃん、こんなこと色んな人に言ってんねやろとか思てる?」
『…へ?』
「好きやとか、心奪うとか、試合観とけとか」
『ううん、 あー最後のはまぁ、色んな場面で言ってそうとは思うけど』
「…まぁ、そーやけど」
『別に、侑くんが軽口叩いてるとは思ってないよ』
「…じゃあなんでそんな余裕な顔してんの」
『…ん? あ、いやどきどきはしてるけど』
「………」
『どきどきしてる暇がないっていうか』
「………」
『凄みがあるというか… ある意味心奪われたのかも』
「ほんまに?」
さっきまでの迫力はどこへやら、
またぱぁっ!ってきらきらの笑顔になる。
魅力的な人だなぁ、と思う。