第33章 求肥
ー治sideー
今日は試合ないし、
明日初戦あたるとこがどっちになるか見てから
借りとる練習場所に向かうことになった。
まだその試合は始まってないから、
今はフリータイム。
他の学校見とるやつもおるし、
今俺と角名と侑はなんとはなしにロビーにおって、
俺はちょっと冷たい空気吸いたいなーおもて
一人でエントランスの自動ドア潜ろうとしたとこ。
「穂波ちゃーーーん!」
『きゃあ、雪絵さーーーん!』
なんやろな、やかましない落ち着いたトーンのでも
きゃーいう感じの2人の声に思わず振り返ると
色白の大福みたいな子と、
あーむずかしな… なんやろ 日焼けしとるけどかりんと饅頭ちゃうねん。
もっと瑞々しくって もちもちしとって…
黒糖の水まんじゅう? …ちゃうな、この子あんな黒ないし…
まぁええわ、柔らかそうでうまそうな白い子と茶色い子が抱き合うとる。
一人はマネージャーっぽいな。
ジャージ着とるけど選手とちゃうよな。
もう一人は私服やから応援か。どこの応援なんかな。
2人でなんや話したかと思うと、
ジャージの子はさーっと俺の隣を横切っていって、
もう一人の子はその背中をじーっと見とった。
なんやろ、いい顔でな。 慈愛に満ちたいうんかな。そんな感じ。
ノースフェイスの黒いダウンに黒い細身のパンツ。
ダウンの下は生成りのフーディー、黒のウエストバッグ斜めにかけてる。
ダウンはオーバーサイズなのに、
フーディーは丈短めでうまそうな腹の肉見えるんとちゃうかなーって期待してまう
がっつり肌隠れてんのにな、顔とか首とか手とか見ただけでもちもちなんわかる。
指に水筒引っ掛けとるし、なんなんこの子。サーファー?
目を瞑って
口には笑みを蓄えたまま
深呼吸して、
それから踵を返して俺がおるエントランスとは反対の方向いて歩いて行った。
…こっち来たら話しかけよう思ったんやけどな。
………うっわ、くそツム、走って追いかけていきよった。
まぁええわ。 俺もあとで絶対話しかけたる