第33章 求肥
ー穂波sideー
1月5日(土)
春高1日目。
どきどき。
カズくんは台湾にいるため一人で来た。
会場の空気が…
予選大会と全然違う!
…当たり前か。
学校の数も違うわけだし、そりゃそうか。
耳に入ってくる言葉もさまざまなイントネーションで。
先程終えた開会式もいろいろすごかったー
威厳もあるし、吹奏楽もかっこいいし、
あれは何て曲だったんだろう。
今は試合開始前。
一度、一階に降りて一息つく。
どこも人は多いけど、
そして高揚感すごいけど、
今この時間、少しだけ観客席よりこっちの方が熱気がやわい。
…いやでもやっぱ、一旦外の空気吸おうっと。
そう思ってエントラスに向かって歩いていると…
「穂波ちゃーーーん!」
後ろからわたしの名を呼ぶ声。
振り返ると…
「きゃあ、雪絵さーーーん!」
雪絵さん!
10月以来の雪絵さんの注入。
むぎゅっとその白くて柔らかい肌を…
服の上からではあるけど抱きしめる。
梟谷はサブアリーナで試合で、もうちょっとあと。
雪絵さんは用事があって一度こっちに戻ってきたけど
急いでいるようなので手短に挨拶を済ませて雪絵さんの背中を見届ける。
…わたし、宮城の優勝を決定する2校だけの試合と、
東京での4校が試合する、全部で4試合だけする試合しか見たことなくて。
…こんな風に大きな体育館で4つコートがあって、
今日はサブアリーナまで使って、
その上、試合終了時間がまちまちだから
いつ音駒の試合が始まるかわかんないっていう状況にすらどぎまぎする。
烏野が先か、梟谷が先か。 わかんないんだもんな…
古森くんたちの井闥山学園はシードなので今日は試合はないらしい。
応援してるチームはいくつかあるけど、
もちろん大本命で、見逃したくないのは音駒。
…次音駒が試合するコート辺りの観客席へ向かうため、
階段の方へと歩き出す。