第32章 あわ
ー穂波sideー
「多分いま穂波に必要なレベル上げは日本人に文法を教えることじゃない」
…研磨くんはこの間わたしが話したことについて言ってるんだろう。
まぁ確かに。直接的には必要ない。
人に教えることで理解が深まる、とかそういうのはまぁ現段階で必要ない。
…でも
『そんなことないよ。チューターをするって、きっとまた違ったレベル上げになると思う』
「…チューター」
『特に力を入れるべきはエッセーだから。うん。…研磨くんありがとう』
「…ん」
『なので、是非やらせてください』
「おー!チューターとかレベル上げとかエッセーとかよくわかんねーけどお願いします。
恩は身体で返すわ。 もうたっぷりと、誠心誠意、何度でも返すわ」
『…笑』
「…だね、薪割りとか煙突掃除とか… おれができないことお願い」
「そっちかーい!なんで俺が婿がやることを代行するんだよ 笑」
「恩を、身体で返すため」
『あはは!笑 十分、こちらもクロさんには恩があるので。
そういうのは気にせずいこう』
「2人して婿には突っ込みなしかよ…」
『………』
「………」
「いや何その沈黙。 え、まじで婚約してるとか?
次の研磨の誕生日で籍入れますとか?」
『………』
「………」
「…いやまじでなんなんだよ、この沈黙」
研磨くんがなんで黙ってるのかはわかんないけど、
わたしはただ、恥ずかしくなってるだけ…
否定できないほど、想像すると嬉しいだけ
しばし沈黙の後、うちに着いて。
見送ってくれてありがとう、って家の前で少し話してると
お母さんが羽子板を持って出てきた。
「おー!黒尾くんもまだいる!羽根付きやってかない?」
「ブフォッ 笑 心さん!顔!w」
お父さんと一緒にやってたみたいで、
ほっぺに○と×がひとつずつ、
それから一際濃ゆい墨で口の周りにカールおじさんの髭が描かれてる。
多分ほっぺのはお父さん。
お父さんの可愛らしい落書きに物足りなくて、
お母さんが自分で描いたのがカールおじさんの髭だろう。
クロさんはのりのり、
研磨くんは意外にもえー…とは言わず、
5人で羽根つき大会?が始まった。