第5章 夏
ー穂波sideー
『カズくん、朝ごはん何食べたい?』
「ご飯と納豆」
『そっか、カズくんは米派だったね。今から炊くからちょっと遅くなるけどいい?』
「…うん。昨日いっぱい食べたし」
昨日クロさんがカズくんのことを小さい研磨くんって呼んでて
今までそんな風に思わなかったのに
途端にカズくんとの会話と研磨くんとの会話が重なる。
言葉少ないけど、裏がない感じがよく似てる。
6:45。
7時半には食べれる…かな。
お米を研いで土鍋で炊き始める。
5合炊きのでええいと5合炊くことにした。
みんなからのお土産でいっぱいの冷蔵庫とクーラーボックスの中身を確認する。
納豆が買ってある…カズくんのお母さんがきっと持ってきたんだな。
お母さんにとってそれが当たり前のことであればあるほど、わたしにはそれがすごいことに思える。
BBQ明けの朝とはいえ、高校生4人、21歳、小3の男子、計6人分。
頭の中フル回転で献立と段取りをイメージして…
空いているコンロ二箇所でお湯を沸かす。
お湯が沸いたら片方は火を止めて筋を取っておいたササミを入れて、コンロから下ろしておく。
もう片方では板ずりをしたオクラを湯がく。
空いたコンロでフライパンを温めて多めの油で茄子を焼いて
出汁と調味料でさっと煮る。
湯がいたオクラは熱いうちに生姜を加えた白だしで和える。
きゅうりは千切りに、トマトは薄切りにして冷蔵庫で冷やしておく。
一晩寝かせてとった昆布出汁を火にかけて、
刻んだモロヘイヤの茎、えのき、お豆腐を入れ軽く火を通す。
葉っぱは食べる前に温めるときに入れるからザルにあげとく。
お味噌もそのときに溶けばいい。
はっ!卵っ… 目玉焼きでいっか。
みんなまだ寝てるかな…
カズくんたちだけ先に食べるかな…
「おはよ、穂波ちゃん」
『!!!!』
手を止めてぼんやり考えていると
背後から話しかけられてものすっごくびっくりした。
振り向くと夜久さん。
「ごめんごめん、すごい驚かせちゃった。手際良く集中してやってるから、声かけずに見てた」
『夜久さん、おはよう。…びっくりしたぁ』
「穂波ちゃん驚いても声出ないんだね。なんかちょっと研磨みたいだった 笑」
『時と場合によります……』
「…にしてもうまそ〜♪」