第32章 あわ
ー穂波sideー
お母さんと着物を選んだ。
赤いウールの着物で、大きめの麻の葉模様のやつ。
中には細かな花柄の長襦袢。紺地に白や黄色…色とりどりの花。
クリームイエローと白の重ね衿。生成りの米澤織の帯。
羽織はザ・大正ロマン!って感じのステンドグラスっぽい柄。
柄!柄!柄!っていう感じ。
羽織には着物や、長襦袢、襟の色が入っていてそれでもまだ、そわそわしない。
一つにまとめた髪には梅結びの水引きの髪飾り。白と淡い黄色の。
…うん、楽しい、ハレの日の和装!
・
・
・
お母さんがお抹茶をたててくれて、干菓子と一緒にいただいた。
それから、歩いて研磨くんとクロさんの “いつもの” 神社へ。
『クロさん、袴似合うよね。体育祭のとき思った。
今日も着せれることなら着せたかった。研磨くんも…』
「マジ?俺もこの隣、和装で歩きたいなって思ってた」
『…あ!成人式!』
「…いきなりまた先のことを」
『紋付のとかでなくて良いなら、うちにあるの着たらいいよ。覚えておいてね』
「…笑 そのころ君はどこにいるの?」
『わたしは、そうだな… アメリカだけども、関係ない関係ない。連絡してね』
「…笑 じゃあ、連絡するわ。 …あー、もう卒業か」
『………』
「っと! その前に春高! 楽しみだねぇ」
『うん、楽しみ』
「穂波ちゃんもベンチ入れば良いのにな」
『いやいや、それはさすがに… ってそうだ!』
「…笑」
『最近いろんな情報が錯綜してて話そびれるの。ごめんね、落ち着きなくって』
「どーした?」
『ツトムくんがね、春高、カメラマンとして入るんだって。その、普通の人は入れないエリアに』
「…へぇ」
「…マジか、なんかつて?」
『うん、つて…なのかな。 今年…去年、いろいろやってたでしょ。
で、いまスポーツかステージか迷ってるんだって。
それで、まぁ、そうだね、つてで春高も撮れることになったって』
「すげーな、なんか… やべ。アガる」
アシスタントという名目で入って、
自分の経験として撮らせてもらえることになったらしい。
だから、持ち場とかないって言ってた。
…そう、だからわたしが観客席からはみれない表情をきっと
きっと、ツトムくんが切り取ってくれるのだ!きゃー