第32章 あわ
『明日は残りのお節をお母さんと作って…夜は、ぼーっとするかな。笑』
「…普通に寝るの?」
『周平もカズくんもいないし、寝ちゃうかな』
「あれ、カズマって…」
『台湾に行ってる』
「あぁ、そっか。 いつもは誰かいるの?」
『…いつも、か。 …家じゃないことも多いし、あまり毎年恒例がないかも。
だから、良いなって思う。毎年恒例の年末年始。こたつでみかん、日付変わるまでゲーム』
「…年末年始、日本で過ごすのが好きって言ってなかった?」
『…あ、うん、宮城だったり、千葉だったり。
おばあちゃん家の時はどっちもやっぱ賑やかだよね。好きだよ、日本で過ごすの。
でもなんだかんだ、海外にも数年に一回は行ってるからなぁ』
「…ふーん。 今年はおばあさん家は?」
『なんだろね?今年はお正月家族だけで過ごしてみよっか〜って。
でも結局、年明けサーフィンしたいしってことで明後日の夜には千葉に行くよ』
年末年始、やっぱりまだわたしたちは高校生で、
それぞれの家族と過ごす時間なのかなぁって思う。
なんとなく。 お泊まりしよっか、とはならない。
「…初詣は?」
『初詣は… おばあちゃん家の時はみんなで行ってたけど… ここではどうかな?』
「…一緒に行く?クロもいるけど」
『え!あ、うん!』
わぁ!嬉しい! 嬉しい嬉しい!
「毎年、クロが起こしに来る。…正月」
『…あぁ』
「昼過ぎまで寝てたいんだけど、10時くらいに。…で、初詣いく」
『…そっか』
「去年…じゃなくて今年、クロが言ってた。来年は穂波が日本居たら一緒に来ようって」
『…わぁ いいのかな、いいのかな』
研磨くんとクロさんの毎年恒例にわたしが参加してもいいのかな
「歩いていける小さい神社だけど… 一本逸れた通りに甘味処があって、正月もあいてる」
『………』
甘味処… なんて甘美な響き…
「…着物着る?」
『あ、うん。お正月は、着る。 あれ、大袈裟かな? 隣歩くのいや?』
「…笑 そんなわけないじゃん。 楽しみにしてる」
『…ん、よかった』
「…じゃあ、また時間とかは電話する。 …良いお年を」
『うん、研磨くんも良いお年を!』
電車を降りて研磨くんに手を振る。