第32章 あわ
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「…へぇ、いいんじゃない」
部室と体育倉庫の掃除や備品の整理とか…
やらせてもらって、研磨くんと一緒に帰る。
研磨くんに、
前に言ってたこと、少しはまとまった?って聞かれて、
今のところのやるべきこととか諸々を話したら
あっさりとそう言ってくれた。
別に議論をしたかったわけでも、
逆にこうして認めて?もらいたかったわけでもなくって、
ほんとただ、現状報告としてしただけだったのだけど、
でもそのあっさりした感じにほっとしたのは確かだった。
…なんだろ、なんだろうな。
研磨くんももしかして、いそがしくなることを嫌う性質ではないのかもしれないって思った。
いや、ただわたしが勝手にいそがしくするだけだからその程度ってことも有り得るけど。
でもなんとなく、そんな風に思ったんだ。
「エッセーってなに書くの」
『ね、何書こうね。8個あるトピックのうちから4つ選んで、自己PRをする。
セルフプロモーションだね。 とりあえず8個とも書いてみるとこからかな。まだ時間あるし』
大学に売り込むのだ。
成績や点数ではなく、自分だけにしかない経験を。自分という人間を。
文章にして。
おもしろいって思う。
それが全てではないけど、
やってみせてよって言われたらよし、やってみようか。ってなる。
「なんか、おもしろい。
穂波楽しそうだね。
ずっとゆるゆるしてたいわけじゃないんだ」
『…いや期待してくれたとこ悪いけど、ずっとゆるゆるしてると思う。笑
そこは変えずにどこまでいけるかな、って。
わたしほら、どうしようもないほどにだらけた欲張りだから』
「…ふ 笑 そうだった」
『まぁ、この話はいいや。パソコンとかスピーカーとかどうだった?』
「…毎晩ログアウトするのが苦痛」
『…笑 春高前だし、うん。 そこはなんとか苦痛に耐えてね』
「…ん」
全くの遠慮なく、とはいかないんだろうけど、
でもそれでも遠慮なく使ってくれているようでよかった。
…わたしからのプレゼントじゃないけど、さ。
お兄ちゃんは何を思ってあんな大きなものを研磨くんに贈ろうと思ったのかな。