第32章 あわ
12月30日(日)
「っつーかお前馬鹿じゃねーの?まじでそこ行く気な訳?」
『…はい、行きたいと思うております』
年の暮れ。
今日から部活が数日休みだという白布くんに、朝から電話で叱られている。
研磨くんに伝える前に
白布くんに暴かれ、電話が来た。
「穂波が行きたいって言ってた大学の名前なんとなく調べたら
超難関とか世界的な名門校とか謳い文句すごかったぞ」
『…ね、それはまぁしょうがないんだよ。だから行くわけじゃないし』
「…編入するのが妥当なんだろ?」
『うん、まぁね、コミュカレいって編入が妥当だよね』
「じゃあ何でそうしねーんだよ」
『しないとは言ってないさ、でも…』
「でも?」
『学力重視じゃないんだよ、エッセーなのさ選考に比重が置かれてるのは。
もちろんどっちにもアプライするし、もしダメでもどうせ編入時にエッセー書くんだから
経験値アップ的な。早いうちからSATもACTも受けるし…』
「…」
『白布くんありがとうね、わたしの大学のことまで色々調べてくれたんだ』
「…興味本意で調べたら
お前の脳天気具合と大学のレベルにギャップがありすぎて検索する手が止められなかった」
『ううう 面倒見が良い…』
「まぁ、ちゃんと考えてるっぽいしいいわ。安心した。
正月宮城こねーんだもんな。良いお年を」
『うん、白布くんも良い、お年を!』
…いやはや優しい。
きっと、まさか知らねーのかこいつ!?的な感じで電話をくれたんだろう。
いや、知らなかった。
世界ランキングとか興味ないし。
SATやACTっていうのは簡単に言えばテストだ。
入試がない代わりにこれを受けてこの点数を願書と一緒に提出する。
日本から行くのでTOEFLももちろん。
わたしが行きたいなと思ってる大学は
それらの最低スコアは定めてないけどまぁ普通に、
ハイスコアとってないと無理だよねっていう感じ。
語学学校はすっとばして
ローカルの高校生と同じように入学希望するわけだから
それなりにいろいろやることはある。
いや、ローカルだってコミュカレ行って編入が主流なわけだけど…
その「それなりにやること」のことの大きさにやっとこ気づいた。
遅かれ早かれやることなわけで。どうせならワクワクする方を選びたいな、とか。