第31章 ガーベラ
「2人目の子妊娠してる、って数年後に連絡が来てさ。
おめでとう、だけ伝えて父親がどうだとかは聞いてなかったんだよな。
俺も駆け出しのころで日々に一杯一杯で」
『うん』
「その半年後くらいに生まれたよって連絡が来て」
『うん』
「その一年後には大学に通い始めたって。授乳続けながら。仕事もしながら」
『うん』
「しかも助産師になる。って。トレーニングとか色々あるだろ。座学だけじゃ済まない。
それ聞いたときは、痺れたね。Allyにも、彼女を支える周りの人たちにも」
『うん』
「全部を受け止めて、妥協せず、一人で背負い込みすぎず、
周りに協力を求めて自分の人生に責任を持って謳歌しようとするその姿勢に痺れたんだ」
『うんうん』
「なにかしらこれから起こり得ないとは言えないだろう。
Allyの場合は妊娠だったけど、いろんな場合がある。
計画していなかった大きな出来事が自分の身に起きること」
『うん』
「…いや、時として男女はバカになるだろ。 あるだろ、穂波と研磨くんにも。
今はまだなくても、これからあるかもしれない。 特にな、やっぱあれだ大自然の中は」
『…笑』
「…朝から話しすぎてまとめ方がわからん」
『…笑』
「いや最後のは要らなかったよな、男女はバカになるとか」
『…笑 どうだろ?』
「2人はきっと色々ありながらも、先を見てるんだろ?
もしその、描いてる先を一度練り直さなきゃいけないことがあっても、
投げ出さずに 見据えて 必要な時は助けを求めて…」
『………』
「…わからん。 何が話したかったのか。
父さんは、いつだって穂波のことを想ってるよ」
…お父さんが口下手ながらも饒舌になり、
そして最後には逃げるようにまっすぐな言葉で締める。
小さな頃から幾度となく目にしたこの一連の流れ。
そして言われてきた締めの一言。
わたしの根っこを支える、礎みたいなもの。