第31章 ガーベラ
ー穂波sideー
寝バックは苦しい
気持ちよすぎて苦しい
苦しいけど大好き
快感って不思議だ…
奥も壁も蕾も絶妙に刺激されて、
耳や首には研磨くんの吐息がかかって、
ぴとって背中に研磨くんの体温が心地いいし
身動き取れない感じにゾクゾクするしで…
気がついたらわたし… 気を失ってた?
気持ちいいのはいつものことなのに、
この気を失う失わないの違いは何なんだろう
えっち、もう終わったんだっけ…
でもまだ研磨くん、繋がってる。 …幸せ。
なんてぼんやりした頭で考えてると
研磨くんのがそっと引き抜かれる
…やだ
でも声がすぐに出なかった
それからマットが揺れて研磨くんが動こうとしてるのがわかる
『…行かないで』
やっと声になった蚊の鳴くような小さな声を、
研磨くんはちゃんと聞き取ってくれた
とびきり優しい目でわたしを見つめ、
頭を、頬を撫でてくれる
「…穂波、大丈夫?」
『…ん。行っちゃやだ』
「…パジャマ着せようと思って。汗冷える」
『…いい。研磨くんのことぎゅってしてお布団被る』
まだ暖房つけてるし…
「…ん。水は?」
『…飲む』
「…ん」
テーブルの上にある水筒をとってくれる
「…座れる?」
『…ん』
「おれ、飲まそうか」
『…?』
ヘッドボードに枕を立てて、
そこにもたれるようにわたしの身体を起こしてくれる。
それから水を口に含むと、
わたしに口移ししてくれた。
研磨くんの口の中であったまった、生温い水。
いのちの水みたい。
回復の水。
「…あ、垂れる」
2回飲ませてくれて、もういい?って聞かれて うん と頷いた。
研磨くんは水筒の蓋を閉めて、
口に収めるのに失敗して、つーと溢れた少しの水を指で拭ってくれる。
研磨くんが神々しい。
髪の色だけじゃなくって、発光してるみたい。
…ほんと、優しい。