第31章 ガーベラ
『…お兄ちゃんの家から通うなら、2週間もいらないくらいじゃないかな。
あのあたりの街とかバスとかは結構慣れてるし… 知り合いも多いし…』
「…そっか もう来年の3月くらいには穂波いないのかと思ってたから」
『………』
「…って、4、5ヶ月伸びただけだけど」
『………』
「なんかそれがだいぶ嬉しいかも… 今から。 おれ馬鹿みたいだね」
『ううん、全然。 彼女をいちいちキュンとさせて、喜ばせる天然のキラーです』
「…は?」
『…笑 なんでもないよ』
…ともすると、すぐに忘れる。
研磨くんの中にわたしの存在がしっかりあるということ。
こんなに大事にされてるのに、
自信がないわけじゃないのに、なんだろう。
それが当たり前とは思えない、
有難いことだって思いすぎてるとこがあるのかな。
そっか研磨くんの描く未来にわたしは普通にいるんだ、って
こういう話をするたびに知って、その度にじーんとなる。
ずっとわたしの手のひらや指や爪を
さわさわしたり軽くもんでくれていた研磨くんの手動きが止まる。
でも、左手はその中に包まれたまま。
2人の間にある距離が 少しずつ 縮んでいく。
…なんかこの感じ、久しぶりかも。
ゆっくり、近づいていく感じ。
…どきどきする。
研磨くんが少しだけ顔を斜めに傾けて
ふわっと 柔らかくて暖かい唇がわたしに触れる
唇が離れ、見つめ合い …また、唇を重ねる
そっと、どこか初々しく。
次のキスをするか躊躇するような、遠慮し合うような間があって、
それにどんどんと高揚してく。
ほわほわ どきどき くらくら…
触れるキスから、啄むようなキスになって…
あ、次だ ってタイミングでお互いの舌が触れる。
ゆっくり 優しく やわらかい 舌の動き
なんだか今日、今日という日は、甘すぎる。
とろけて溶けて消えてしまいそう…
キスをしながらそっと、丁寧に、研磨くんに押し倒される。
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