第31章 ガーベラ
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研磨くんは、向き合って座ったわたしの髪の毛を触ってる。
何も喋らないし、他に特に動きはないのだけど、
なんだろう、この満たされる感じ。
指がこめかみに触れる。
ちょっと掠めるだけでも、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
性的な気持ちいいじゃなくって、
安心する、この感じ。
喉の奥からゴロゴロと音が鳴り出すんじゃないかなって。
そういう気持ちよさ。
そんなことぼんやり思っていると顎をすりすりと指で撫で始めた。
こう、下から上に向かって。
…ん?
思わず首を傾げて研磨くんの目をみる
「…なんか、猫みたいって思って」
『………』
猫みたいな研磨くんに猫みたいって言われた。
研磨くんはそのまま顎を撫で続けるのだけど
ここを下から上に撫でられると、
なんでか顎が上に向いていく。不思議。
そして、目も瞑ってしまう。不思議。
少しすると指が眉間に移動した。
次は上から下にすりすりと優しく撫でられる。
わたしはここが弱い。
こんな風に研磨くんに触られたの初めてだけど、
小さなころお母さんに甘えて膝枕をしてもらってる時、
ここを撫でられて気持ちが良かった記憶がある。
目を開けてはいられなくなるんだよなぁ、ここって。
でも多分、それだけ無防備になる場所だから、
いやだなって思う場合はきっとその振り幅も大きいんじゃないかなぁって思ったり…
「…ふ 笑」
研磨くんの口から溢れる小さな笑い声?に、
目を開けるんだけどまた閉じてしまう。
指が眉間をすりすりし続けるものだから
「…おれ」
『…?』
指が眉間から離れて、
両手でわたしの左手を握るというか触るというか…
指を遊ばせながら握ってる?感じ。
とにかく研磨くんの両手がわたしの左手や指に触れてる。
「穂波がアメリカ行ってる間に恋しくなったらさ、猫撫でる」
『………』
「まだ一年以上あるけど」
『猫と暮らすの?』
「…できたら自分で狩りもできるけど、そこそこ懐いてくれてる感じがいいけど…わかんない。
動物苦手だから、そんなべったり世話するのとかは無理だし」
…苦手だけど撫でるんだ
前、リエーフくんと猫助けたって言ってたな。