第31章 ガーベラ
『…あ、これ薄紙。そっかじゃあ、これ一緒に剥がせばいいんだ。
研磨くん、あのね、 って研磨くん普通に目が開いてる!』
予想外のとこで目を開けておれの方を見た穂波ばっちり目が合った。
「…ごめん、穂波があまりにも無邪気でかわいくて」
『…』
「…」
『…あ、それでほら、これ。蓋とっても中見えなかったの。
だからここに横に並んで開ければ一緒に見れるよね』
…何でこんなに同時に見るってことにこだわってるのかわかんないけど
かわいいからいいや。
「…アキと穂波にっていうプレゼントはいつも、こうして開けてたの。
…で、アキもいつも研磨くんと同じことしてた」
心さんが耳元で小さな声でおれに教えてくれた。
…そういうことか。
穂波の隣にいくと
穂波は薄い紙に貼られたシールを丁寧に剥がす。
それからその薄紙をめくる。
『…わぁ』
その向こうにあったのは
木のフレームに入ったA4サイズの写真。
それが2つ並んでる。
ひとつは去年のクリスマスにペアルックみたいだから、って撮られたやつ。
撮られたって言っても、プロのシゲさんが撮ったやつで、なんか全然違う。
洒落てる。 自分が写ってるのが信じられないくらい。
…おれ、目あっちの方みてるけど。
もう一つは今年、音駒部員が集まってBBQした時の次の日の。
こっちは完全にカメラに気付いてないやつ。
おれと穂波が浴衣着てて…
向かい合ってて、穂波はおれの襟元に手を添えてる。
多分、直してくれてたのかな。
おれは穂波の後毛を耳にかけようとしてるとこ…
おれ、みんながいるとこで普通にこういうことしてるのか。
いや別に、しないようにとかなくって、
穂波といるときは何でもいいやって感じなんだけど…
アイテム装備してるし…
でもこうやってみるとちょっとぎょっとする。
穂波、すごいかわいい顔でおれのこと見てるし。
おれのことを見てる穂波の横顔。
穂波のことを見てるおれの横顔。
…写真の質が良すぎて、
あと無垢な木のフレームもすごいかっこよくて。
恥ずかしいとか、写真嫌いとか… ちょっとそういう次元じゃない感じ。