第31章 ガーベラ
ー穂波sideー
研磨くんは1時間くらいしてから目が覚めたようだった。
お腹空いた… とのことだったので、
サクサクっと仕上げて夕飯にする。
豚肉ソテーのりんごクリームソース、マッシュポテト、
クレソンとマッシュルームのサラダ、レンズ豆のスープ、
ビーツのピクルス、ブール。
「このパン美味しいね」
『ほんと? 時間あったから今朝焼いたのだ』
「え、あ、そうなんだ。美味しい」
『これね、大きな丸で焼くフランスパンなんだけど、
くりぬいてさ、シチュー入れるの、いつかやってみたい』
「…笑 うん、やればいいよ、おれもたべたい」
研磨くんは優しく笑ってそう言った。
…ほんと食べるの好きだね、
って言葉も一緒に聞こえてくるような気がしたけど
やればいいよ、が 勝手にすれば とはほど遠い優しいものできゅんとする。
お皿を一緒に洗ってくれる、とのことだったけど
休んでいてもらいたくって
ストーブに薪を入れるのをお願いした。
そのままソファに座ってまったりしてくれてるので
その間にささーっと洗い物を済ませてしまう。
ホームアローン観たいって言ってたな。
ケーキ、上に持って上がって映画観ながら食べようかな。
お茶は…濃いめのお番茶にしよう。
多めにに出して保温瓶で持っていけばいい。
そしたら次は…
「穂波〜 何してるの」
ケーキを取り出そうと冷蔵庫の前に立ったところを後ろからギュってされる
ううう… ときたま現れる甘えん坊研磨くんの破壊力ったらない。
ほんとにほんとにいちいち、ずるいんだ。
「あしたの準備?」
『ううん、今年もケーキ焼いたの。食べれるかな?』
「…そっか。うん。食べたい。やった」
『…ふふ 上で映画観ながら食べよっか?』
「…ん。そうする。 …これ持って上がっとく?」
カップやデザートフォーク、台拭きなどを載せておいたお盆をさして研磨くんが言う。
こういう、ちょっとした、なんでもないような、
ついでで出来ることを、当たり前に やろうか? って言ってくれる。
これだけのことが、ただそれだけのことが、嬉しい。
やってくれなくてもなんともないけど、やってくれるとすごく嬉しいのだ。