第31章 ガーベラ
ー穂波sideー
ストーブの様子も気になるし
そろそろご飯の用意もしようかなって下に降りてきた。
研磨くんは上でゲームしてる。
小さな頃からお母さんは誕生日やクリスマスのご馳走を
いつもと違うけど、いつもとかわらない様子で作ってくれた。
知らないうちに仕込みとか、してくれてたんだろうけど、なんだろうな。
ご馳走を作ることよりも当日、わたしたちと過ごす方に重点を置いてくれてるようだった。
…って今になって思う。
だから、品数は少ないけど華やかだったり。
ちょっといつもと違う素材が使われてたり、
素材は馴染みがあっても組み合わせがいつもと違ったり。
そういう工夫で特別感を出してくれてた…のかな。
極め付けはスパークリングジュース。
テーブルの上に食事と一緒にジュースがあるだけで
しかもそれしゅわしゅわしていて、もうすっごく特別に感じた。
…だからかな、わたしもそんなにがっつり手をかけようとは思わない。
玉ねぎ、セロリ、ニンニクの入ったレンズ豆のスープをコトコトしながら
豚ロースの筋をとったり、りんごと玉ねぎをスライスしたり、
じゃがいもの皮を剥いて切っておく。
豆に火が通ったら火を止めて、
別の鍋でじゃがいもをひたひたの水で茹で始める。
豚肉をフライパンで焼く。両面じっくりと。
その間に洗い物とか。机の上をセットしたりして。
研磨くんからのお花、ほんとに綺麗。華やかだなぁ。
じゃがいもは水分を飛ばしてからマッシャーで潰して、
バター、牛乳、塩、黒胡椒で調味して完成。
お肉が焼けたらバターを入れてりんごと玉ねぎを炒める。
しんなりしたら白ワイン、生クリーム、レモン汁、塩胡椒を加えてソースを作る。
…パンをトーストする前に、研磨くん呼んでこよっと。
火を止めて二階へあがると、
ソファに膝を曲げて座ったまま研磨くんはすやすや寝てる。
ゲームは手の平にかろうじて乗った状態でソファの上にある。
…ううう。かわいい。
ゲームを切っていいのかは分からないので、
そのまま机の上に移動させて、
大判のブランケットを背中側から身体全部を包むようにそっとかける。
わたしが降りてからまだ30分も経ってないと思うんだけど…
毎日部活で今日も部活帰りだもんな。
疲れてるよね。