第5章 夏
『カズくんが初めて会った人の名前呼んだり喋ったりするの初めてみた』
「…へぇ」
『………マスカット、食べる?』
「…ん?…あぁ、うん。…食べよかな」
『はい、あーん』
お皿に手を伸ばす前に、穂波の手が伸びてきた。
ちょっと驚いたけど、口を開けると
ぽんっと粒が口の中に転がり込む。
穂波はそのまま唇を指でなぞり、
つんつんぷにぷにしてから離した。
何事もないかのように、穂波は葡萄を自分の口に運んで食べている。
(………え、今のなに?)
クロ「穂波ちゃん、おれにもあーんして?」
穂波の後ろからクロがやってきてカズくんがいたとこに座る。
『クロさん〜 あ、クロさん着替えある?夜久さんは持ってきたって』
クロ「ほんとうまくはぐらかすねェ。…服なら何かしらあるし大丈夫よ」
『うち、B品のとかだけどあげれる在庫があって。後でみてくるね』
クロ「おー、マジか。ありがと。服って言っても在庫あると重いんじゃね?
行くとき声かけてね」
『慣れてるから大丈夫。でも興味あるなら声かけるよ〜』
クロ「おぉ、行くわ。……小さい頃からこんな感じ?」
『…んー、そうだね…メンバーも大人は変わりない。
お兄ちゃんのサーフ友達とか、あの辺のちょっと若い層も、小さい頃からずっと来てる。騒がしいよね 笑』
クロ「…賑やかで明るいけど落ち着いてて、騒がしいって感じはしねぇけど。遊児を除いて」
『あはは!遊児!たしかに。遊児って遊ぶにの児童の児って書くの。まんまだよね』
クロ「カードゲームとかボードゲーム探すっつって上に行って帰ってこないわ」
『仮眠とってるのかもなぁ。…今日遊児と同じ部屋でもいいかな?』
クロ「…おぉ、俺らは大丈夫だけど。…研磨は?」
研磨「おれは穂波と寝る」
クロ「………だわな」
『カズくんも、クロさんたちと同じ部屋で寝るかなぁ?』
クロ「あー、ちっちゃな研磨?」
『…ふふ。…うん、ゲームしてた小学生の男の子』
クロと穂波がいろいろ話してる側でおれはゲームを続ける。
3人で電車に乗ってる時とほとんど変わらない図。
ラク。