第31章 ガーベラ
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「あーあったかい」
やっぱ穂波ん家はあったかい。
薪ストーブ×床暖房はずるい。
ストーブの前に配置された一人がけのソファに座ってる。
あったかいし、ココアの匂いするし、穂波いるし、楽園みたい。
穂波は大きくて透明な花瓶に花を飾って、
ダイニングテーブルに置いた。
それからココアを持っておれのとこにくる。
『メリークリスマス』
「…ん」
『ふふ。 はい、どうぞ』
小さなお盆にココアと一緒に、クッキーが並んでる。
小さなお皿に2枚。
「クッキーだ」
『よければどうぞ、お母さんが焼いたの。ジンジャークッキー』
「…ん、いただきます」
穂波は自分のお茶とクッキーを取りに行って、
もう一つある一人がけのソファに座る。
それからココアを飲みながら、
一昨日が今年最後だったっていうレッスンの話とか、
商店街の魚屋のおじいさんの話とか、
アキくんのツアーの結果とか、
あとはおれにゲームとか部活のこと聞いてきたり…
そんな感じで過ごした。
クリスマスって名目で家に呼ばれて、
そばにはクリスマスツリーがしっかりあるけど、
変な気負いがなくっていつも通りで過ごしやすい。
おれは普通にゲームをしながら話してるわけだし。
──「なぁ、研磨!クリスマスのお家デートってなにすんの?」
今日の部活終わり部室で夜久くんに言われた。
「…え。お家デートってなに?」
「お前らがいつもふつーにしてる、どっちかの家でまったりするやつ」
「…あぁ、うん、まったりしてる」
「いやだからそれは、いつもの、だろ?クリスマスはなんか違うの?」
「…別に特に何もしないけど。まだ去年一度過ごしただけだしわかんないよ、そんなの」
「まぁ、そうだな。まだ今年で2回目か。去年は何した?」
「…何したっけ …あ、ミイラ………」
「は?ミイラ?」
「ううん、なんでもない」
また思い出し笑いしそうになったけど、堪えた。