第31章 ガーベラ
ー研磨sideー
半日練習のあと、家に帰って昼ごはんを食べて。
着替えてから自転車で花屋に行った。
「はい、こんな感じに仕上げてみたよ。どう?」
「…あ、うん」
明るいオレンジの花、ガーベラっていうらしいんだけど、それを選んだから、
なんとなくもっと子供っぽい感じになるのかなって思ってた。
ガーベラは、絵に描いたような花だなって思うから。
「あ、うん。って!笑 僕、相当気に入ってるんだけど?」
「…あ、うん、すごくいい。 ありがとうございます」
「でしょ、君の選んだ3つが面白かったから、楽しかったよ僕も。
クリスマスローズの花束は、僕、作るの大好きだ。動きがあって。
はい、じゃあちゃんと紙袋から出して渡すんだよ。
良いクリスマスを!」
代金を支払い、自転車に乗って穂波の家に向かう。
・
・
・
初めてじゃなくても、やっぱ花を渡すのってちょっと恥ずかしいな。
それでなんでかわかんないけど、隠してしまう。背中に。
インターホンを鳴らしながらそんなことを考える。
『研磨くん、ようこそ』
ドアが開いて、穂波が視界に入る。
おれ、結構この瞬間がすき。
ドアを開けると穂波がいるのが、よくわかんないけどすき。
…でも、ようこそって言われたらなんて答えるの?
「…え、うん。お邪魔します?」
『…ふふ。 ささ、どうぞ』
…今日もかわいい。
ベージュのリブニットパンツにアイボリーのざっくりしたニット。
ゆるっとしててかわいいし、ネックレスも鎖骨も見える。
「うん、あっと穂波これ。 はい」
家に入る前に、渡してすっきりしたい。
穂波が背中を向ける前に花束を徐ろに差し出す。
『…わぁ ありがとう。 …嬉しい』
あ… そうだ、去年もこの顔…
いつものありがとうとはちょっと違う、かわいい顔、してた。
こっちまでありがとうって気持ちになる。