第30章 rollin’ rollin’
…いやでも。
「グルーヴってなに」
『へっ』
「いま、歌ってたでしょ」
『また難しい質問を…』
「…掴むものなの?グルーヴって」
『…多分、定義とかそういうのないんじゃないかな。
波?うねり?ぐわぁって感じ。 のまれたり、掴んだり…』
「………」
『あの… DJの音に酔った感じは、グルーヴによるものかも…しれない』
「………」
体育倉庫でのこと、思い出してるんだろう。
穂波の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「…ん いいや、やっぱよくわかんない」
『だいぶ、感覚的な言葉だよね』
「…ん」
穂波は立ち上がって窓の外を眺める。
俺はまたゲームに戻る。
思い出したように、
もしくはさっきの会話を忘れたように、
また穂波の唇から歌が零れだす。
『…君と2人 朝よ来ないで』
…半分もふわっとしてるのに、
理解できるとこの深さっていうか、
しっくり度が半端ない。
『…昨日行ったお店でライブがあったって言ったでしょ。その人が歌ってた。
あまーい声でね、すごく、よかったよ。CDも買った』
「…ん おれは穂波が歌ってるのでいいかも」
…聞く前からわかんないけど
穂波の口ずさむ歌がすきだ。
…今週末はクリスマスイブ。
昨日、部活の後に去年の花屋に自転車で行ってきた。
まだ花を自分で選ぶのは2回目だし、
去年と同じ感じにするか迷った。
「まだ若いんだし、いろんなの試してみたら?
どんなの選んでも僕がいい感じにまとめてみせるから」
って、店の人がニヤリと笑って言ったので、
去年の白とくすんだ緑、とは違う感じで頼んだ。
…なんとなく、だけど。