第30章 rollin’ rollin’
ー赤葦sideー
あの日のことを思い出すと、
まるで魔法にかかったみたいな時間だったなと思う。
それでいて、地に足がついていて、
ちゃんと現実だと思わせるのは、
いつだって穂波ちゃんはお腹に力を宿していて、落ち着いているから。
表情豊かで、感情も豊かで… その中でもずっと、一貫して流れる落ち着きが彼女にはある。
そしてそんな穂波ちゃんのそばにいると、
俺も心が休まるというか… 落ち着くんだよな。
自分のままでいられる、というか…
今まで知りもしなかった自分の感情や一面を見ることもあったりするけど、
それも含めて、あ、これが俺なんだなと受け止められる。
…春高まで2週間弱。
勝敗、試合の数…そういうことは差し置いても、
木兎さんたち3年生と出る最後の大会。
気が引き締まる。