第30章 rollin’ rollin’
ー研磨sideー
『研磨くん、おはよう!』
朝練のあと着替えて、
玄関に向かってると後ろから穂波が駆け寄ってくる。
…また、この大きな笑顔。
大輪の花が咲いたみたいな。
それか、夜空に上がった大きな花火みたいな。
「…おはよ、穂波」
今日もかわいい。
「おはよー!穂波ちゃん、今日もかわいいね!」
「おい、リエーフ!それ俺の毎朝のセリフなんですけど!」
「なんすか黒尾さん!誰がいつ言ってもいいじゃないっすか!
っていうか黒尾さん毎朝穂波ちゃんに会ってないじゃないですか!」
「うっせーわ!リエーフも黒尾も!」
「まぁ、あの超可愛いビッグスマイルは研磨にしか向けられないんですけどね〜」
『研磨くん、あのね…』
穂波はいつものように喧しい人たちに笑顔を向け、
それから気にせずおれに話し始める。
シカトするでも、無視するでも、
逆に謙遜の言葉とかを言って会話に参加するでもなく。
きっとクロもリエーフも本当に今日もかわいいって思ってて、
まぁ2人とも軽い印象は否めないけど、でもきっと本当で。
それを穂波は、ただの常套句というか戯れというか、
そのくらいのことと捉えてるんだろうなって思う。
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『rollin’ rollin’〜♪』
昼休み。
ゲームをしてる俺の隣で、穂波は聞いたことない歌を口ずさんでる。
…日本語の歌。
「グルーヴ…」
聞いていると、ふわっとした言葉とか表現と、
あ、でもすごいわかるその感じってのが半々で、
ふわっとした方が妙に気になってくる。
穂波は身体を揺らしながら楽しそうに歌ってて…
小さな声で、でも綺麗に耳にすーっと入ってくる。
いや耳だけじゃなくって… こころ、とかにも