第30章 rollin’ rollin’
ー赤葦sideー
こんな質問馬鹿げてるし、返事に困るよなと思って、
終わりにしようと思ったら
穂波ちゃんはそれを無視して話し始めた。
その上、一度急に顔を赤らめて、もじもじと黙ってしまった。
夜道で2人、その表情は可愛すぎて、
本当にキスをしてしまうかと思った。
穂波ちゃんにキスをしたというやつも、
同じような感じだったのだろうか。
得体の知れない、誰かもわからないそいつに漠然と抱いていた嫌悪感が
なぜだかすーと消えていくようだった。
なんというか、そんな悪い気持ちでしたわけでも、
魔がさしたわけでもなく、もうどうしようもなかったんじゃないかな、というか。
目の前で好きな子が、たまらなく可愛い顔をして、そして隙があって…
「あ、ごめん。ちょっと… いろいろ考えてしまって。
気になる点はいくつかあるけど、うん。十分な返答だよ。
変な質問したのに、ありがとう」
『…ほんとに大丈夫だった?笑
でもこればかりはね、みんな一緒じゃないし、
もう今まで通りにはいられない!ってなることも多いと思うから、
参考にはしない方がいいよ。すごい語っておいてなんだよって感じだけど…』
…いやもう、一番参考になるんだけど。
参考っていうか、もはや回答であって…
とはいえ、だからといって抑えれる衝動を抑えないでいいとは思わない。
『…京治くん、またこうしてご飯食べようね!』
穂波ちゃんは俺の前にぴょんっと来て、
手を後ろに組みながら、後ろ歩きをする。
「…あぁ、うん。 そうだね」
『なんか一緒に外食とか、新鮮だったよね。
合宿でも一緒に食べることもないしさ、楽しかった』
「うん、俺も楽しかった。一緒にメニュー見るのとか…」
『京治くんとは食の趣味が結構一緒なのかも、って思ったり』
「…食の趣味? 穂波ちゃんが作るご飯、好きだよ」
『…ん。ありがとう。 あ、そうだ春高後にでもうちに遊びに来てね。
もしよければ、光太郎くんとかも一緒に。 卒業前に、さ』
「え?」
『お兄ちゃんもツアーが終わって帰ってくるし、光太郎くんにまた会いたいかもしれない』
「あぁ、うん?」
家に、俺たちが?
…よくわからないけど、頷いておこう。