第30章 rollin’ rollin’
ー穂波sideー
「fearless girlってどんな子だと思う?」
ほぅ…
そんなことを歌っている曲があったなぁ…
『どんな子だろうね? いろんなパターンが思い浮かぶけど…
例えば肉体的に強くて怖いもの知らずって感じもあるかもだけど、
なんだかしっくりこない気がする。
そういうfearlessじゃない感じ、するなぁ』
「うん」
『なんだろう、儚い感じの子を想像しちゃうな』
「…儚い」
『ふっといなくなっちゃうような。京治くんは?どんな子だと思う?』
「…無邪気で、力強くて、でもそうだね、同時に儚さを感じる子」
『ほぅ… なんだかすごくピンときた。やっぱ儚いけどって感じ、するよね。
そんな子に心を奪われると、大変そうだ…』
「大変?」
『…なんだろう、ハマってしまいそう。
例え手が届かない存在でも、後戻りができなそう。
…って後戻りができる恋愛なんて、そもそもないか』
「大変ではない、と思うな俺は」
『うん』
「無邪気すぎて、警戒心がなくって… まぁ、自分の衝動を抑えるのは大変かもしれないけど。
心が苦しいとかそういう類の大変は、ないよ」
『うん、わかった。 ちょっと軽薄な発言だったね、ごめん』
きっと、京治くんはfearless girlと聞いて、
好きな人を思い浮かべたんだろう。
叶わない恋をしているような歌だった。
京治くんの恋は、やっぱり叶わないのかな。
『わたしはあれが好きだったな… 星に願いを』
「…あぁ、とてもよかったね。流れ星が鮮明に浮かんだ。
ここは屋内なのに、静かな夜空の下にいるような心地がした」
『愛する人ができたなら…かぁ、ってなった。
子守唄にしたいなぁ、いつかそのときが来たら』
星に願いをのメロディに、
オリジナルの歌詞を載せたもので、
愛する人の幸せを、ごく控えめに優しく遠くから願うものだった。
なんだろう、幸せでいてくれますように、なんて直球なものじゃなくって、
すごく、間接的というか。
困ったことがあったら僕がなんとかする、じゃなくって、
その子のことを星あかりが照らしてくれるといいなっていう、
淡い、でもとても暖かくて、それからとても贅沢なような… そんな詩。