第30章 rollin’ rollin’
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穂波ちゃんが席に帰ってくると、
次は〇〇さんは友人と一緒に店の人と話してくる〜と言って席を立った。
『京治くん、ライブよかったね』
「あぁ、うん。すごくよかった」
『あの、ね、これ。 ちょっと遅くなっちゃったけど、誕生日プレゼント』
小さな紙袋を渡される。
『あ、えっと… このタイミングでこういう形で会えたから、さ。
お返しとかそういうのはいいからね。タイミング。 …そう、タイミング』
「…うん。ありがとう。 開けてみてもいいのかな?」
『あ、うん。もちろん。
京治くんのこといっぱい知ってるようでまだあまり知らないなぁって思いながら、
それでも京治くんのこといっぱい考えて選んだよ。 …どうかな』
seedという会社の消しゴムが2つ。
青いケースのものを普段から愛用してる。
これは初めてみる。
黒い箱に入っていて金色の文字でsuper goldというロゴが入っている。
「消しゴム、だよね? なんかすごい、高級感」
『うん、パッケージかっこいいよね。そこの消しゴム普段から使ってて…』
「俺も、使ってる。レーダー、青いケースの」
『わぁ、一緒だ。わたしも、それだよ。
…そのね、そのタイプのには、天然ゴムが配合されてるんだって。
消し心地が最高らしい。 お店のお兄さんが教えてくれた』
「へぇ… 使うの、楽しみだな」
『かっこよく潔く一つにすればいいものの、欲張って二つ同じの入れちゃった 笑』
「あはは、お陰で躊躇なく一つ目を使えそう。ありがとう」
それから、クリップのようになってるしおり。
くの字型になってるワイヤーが、
読んでいる間に片手で押さえておかなくてもページを開いたままにしてくれるらしい。
そしてそのまま閉じて栞になる。
こちらも黒い地にゴールドのロゴとワイヤーでかっこいい。
あと、コーヒーのドリップバッグのセット。
どこか喫茶店のもののようだ。
予想外の贈り物に心が躍る。
物自体ももちろんだけど、
それ以上に選ぶのにかけてくれた時間だとか、
考えてくれたことだとか…
それをそのまま伝えると、
『京治くんからの栞も、わたしもそっくりそのまま同じことを感じたよ』
と言われた。