第30章 rollin’ rollin’
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〇〇さんの友人が一人来て4人での食事になった。
2人ともフランクな方で話しやすく、
多少していた緊張もすぐに解けた。
穂波ちゃんと一つのメニューを見ながら、
どれにしようか、これも美味しそうだね、などと言いながら選ぶ。
それだけのことが、すごく新鮮で、特別で、嬉しい。
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「あの、今日は演奏か何かがあるんですか?」
ステージのようなスペースがあって、
席の配置が明らかにそこに対して広がるようになっている。
食事が半分くらい済んだところで気になっていたことを聞いてみた。
「うん、私の友達が歌うんだ、今日」
『へぇ…』
「あれ、穂波ちゃんにも言ってなかったっけ?ごめんごめん。
一人でギター弾いて歌うから、そんなうるさいやつじゃないからさ。
真正面の席取っておくかって聞かれたけど、話も少しはしたいし、端でお願いしたんだ」
「あと20分くらいかな」
『わぁ、楽しみ。ね、京治くん?』
「うん、初めてだなこういう場所でライブを聞くの」
『わーい、京治くんの初めてに同席できる』
穂波ちゃんは屈託なく笑ってそんなことを言う。
俺の初めてなんて、既にもう穂波ちゃんにいろいろ持って行かれている。
好きになるということ、それ自体もだし、
それに伴ういろんな感情…
つい触れてしまったりするそういう、衝動的なもの…
細かくあげていけばキリがないほどある。
「京治くんはさ、好きな人いる?」
〇〇さんに聞かれるが、
その目も表情も、俺の好きな人が誰かわかっているといった感じだ。
それはここに来たときから薄々感じている。
「はい、います」
『…ふふ』
「そっかぁ〜いいなぁ〜高校時代の恋。甘酸っぱい」
「…甘酸っぱい?」
「何だろうね、学生時代の恋ってすごくぎゅうっとしてる感じがする。
濃ゆいというか、そりゃ大人になってからももちろんあるんだけどさ」
「でも、確かに甘さも酸っぱさもありますね」
「ほうほう。 もっと聞かせて?」
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