第30章 rollin’ rollin’
ー赤葦sideー
12月16日(日)
先日、栞と一緒に送った返事に対してまた返事の手紙が届き、
そこには穂波ちゃんの電話番号が書いてあった。
手紙の締めに、一度電話もらえると嬉しいです。と書いてあったので、一度だけ電話で話した。
タクシーで迎えがくることに少々、
たじろいでしまったけど、何も高級車が来るわけではない。
気負わずにいようと思った。
木兎さんには少々嘘をついてしまったが、
自主練をしない旨もなんとか理解してもらえた。
穂波ちゃんからそんなお高い人じゃないし、
お店もカジュアルなお店みたいだよ、とはきいているが、
ジャージで行くのも憚られるので私服に着替え部室を出た。
校門から少し行ったところに、タクシーが止まっている。
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タイ料理の店にタクシーが着いた。
高級なそれではなく、カジュアルで、でもチープではない。
洒落ているけど、現地感もちゃんとある。
…そして、ずいぶん賑わっている。
入り口のところからキョロキョロと探していると、
『あ、京治くん。やっほー』
いつもの笑顔で、穂波ちゃんが手を振る。
『〇〇さん、こちらが京治くんです。
京治くん、〇〇さんだよ』
テーブルのとこにたどり着いた俺の横にすっと立って、
穂波ちゃんはさらっと紹介してくれる。
「わぁ!予想を超えたイケメン! でも、想像通りっちゃ、想像通り。
あ、〇〇です。いそがしいところお呼びだてしてごめんね。
ささ、どうぞ気楽に。 座ってください」
「あ、いえ、とんでもないです。今日はお声をかけていただいて光栄です。
よろしくお願いします」
「いやぁ、よろしくしたいのはこっちなの。
今日はほんと気楽に、あと食べたいもの何でも食べてね。
部活帰りなんだもんね、ほんと、遠慮なく!」
『…ふふ。 光太郎くんは大丈夫だった?』
「あぁ、うん。今日は何とか、納得してもらえた」
『えっとね、わたしは炭酸水頼んだんだ。京治くんはどうする?』
「…俺は、えっと何か頼むべきなのかな?とりあえず水でいいんだけど」
「あーもう全然。気にしなくていいよ、カジュアルなお店だし、ご飯いっぱい頼むし。
フードメニューどうぞ……」