第30章 rollin’ rollin’
ー研磨sideー
12月14日(金)
今日は穂波が弁当を作ってくれた。
おれが、頼んだ。
もうずっと、家行けてないし…
学校で会うだけ。
部活の手伝いをレッスンのない水曜と木曜にしてくれてて、
週2で一緒に帰ることはできるけど、それじゃ足りない。
『はい、どうぞ』
「…ん、ありがと」
誕生日にもらった弁当セット。
いつも多分、アイロンまでかけてくれてる。
「うわ…うまそ いただきます」
チャーシュー?、味玉、ほうれん草胡麻和え、にんじんしりしり、
牛蒡とささみのサラダ、赤かぶの漬物、梅干し、みかん。
「チャーシュー?」
『そう!チャーシュー!作ってみたの。鮪だよ』
「鮪のチャーシュー… あ、おいしい」
パサパサしなくて、魚臭くもなくて美味しい。
「初めて食べた」
『ね、この間さ影山くんに会ったでしょ、
その時にね、影山くんが買ったお弁当に鮪のチャーシューが入ってたの。
ちょっと味見させてくれて、それで、美味しかったから』
「ん、うまい」
『…ふふ。よかったぁ』
また、その顔。
ほんとかわいい。
影山と偶然会うとかほんと何なんだろ、穂波。
そのあとユース合宿にいたと思われる兵庫の人とも喋ったって。
でもほんとに影山たちと同じとこにいたのかはわからないけど、って。
「日曜は、結局梟谷までいくの?」
『…あ、ううん。わたしと〇〇さんは一緒に行くけど、
京治くんはそのまま来てもらうって。タクシーを梟谷の前に呼んどくって言ってた』
「…へぇ 普通のタクシーかな」
『えっ 普通じゃないタクシーって何?』
「リムジンとか…」
『…笑 いきなりドラマや漫画の世界だね。笑
京治くんが校門のとこでリムジンに乗り込むの、想像したら結構じわじわくる』
「…ふ 笑 確かに」
いつものあの表情で、リムジンに乗り込んでたら…
『ふふ… おもしろい。
なんで研磨くんがリムジンって言い出したのかなって、
それも考えると相当おもしろいんだけどね 笑』
穂波がくすくすと笑う。
…今日も、平和だ