第30章 rollin’ rollin’
ー侑sideー
なんなんマジめっちゃアガるわ。
かわいかったー
けど連絡先いくら聞いても教えてくれんかったし。
あんなに屈託なくわろて、無邪気に話して、人懐こいくせにガード固いとかなんなん。燃えるやん。
・
・
・
「ほんっま、ツムお前アホや。なんで江戸牛蒡買うてないん」
「あー!?そんなん知らんわ、なんや江戸牛蒡って!土産があるだけ感謝しーや!」
「いやわかんで、このチョイスはどれも間違いない…うまいやつや」
「やろ!薬味八珍白菜漬けなんか、名前からしてうまそやろ!」
「名前はどーでもええけど、千枚漬けに赤鏑漬け、ぬか漬け、柚白菜て…」
「なんや文句あるんか」
「いや文句はないけど、江戸感ないやん。なんやもっと、茶色いイメージあるやん。歌舞伎漬けとか」
「茶色いんも入ってるやろ!」
「入ってるけどもこれ奈良漬けやん。江戸感ゼロやがな」
「なんやサム、ほんま腹立つな!そない文句あるなら食うなや!」
「いや食うし。漬物自体には何の文句も罪もないし。
でもどれもうまそうやな。もうメシ炊けたかいな。ツムも食うやろ?」
「ぉん!食うけども!」
あの子もその店の漬けもん好き言うてたしな…
…あの子?
「ああああああーーーーーーーーー!!!!やってしもたーーーーーー!!!」
「うっさいわ、ツム」
名前聞くん忘れとるやんけ!
話がとんとんて進むんが嬉しくて、
関西の子とはノリはちゃうけど好きやなぁこの感じおもて、
相当浮かれてたんやな、俺…
知ってる情報あんまないやん。
見た目以外。
16歳。あの辺には住んでない。
………。
あんまないどころちゃうやん!全然知らんやん!
あの辺ってなんやねん!浮かれ過ぎやろ、俺!まじでやばない!?
あ、でも変なこと言うてたな
『わたしの直感が正しければ、わたしたちは近いうちに再会するでしょう』
「なんやそれ! ほんまに行ってまうんかいな!」
妙にセリフじみた声と表情と振りつけでそう言って、
ほんまに人混みん中に消えてった。
なんやねん直感て。
バレーとは無縁そうな日向っ子感あったしな。
春高とか存在すら知らんやろ。