第30章 rollin’ rollin’
しばらく収拾のつかない会話を続けながら、一緒に歩く。
ほんとにとりあえず歩いてる、って感じだけど。
侑くん、どこ向かってるんだろ。
『ねぇ、侑くん』
「なに?」
『どこ向かってる?』
「知らん、俺ここの人ちゃうもん」
『うん、そういうのは好きだけど、侑くん新幹線とか乗る予定はないの?』
「あー!しもた!すっかり忘れとったわ!」
『…道戻ろっか。新幹線何時?』
普通に歩いたらだいぶギリギリになりそうだったので
早歩きしながら駅へと向かう。
『…ぶっ 笑』
「なんや、何がおかしいん?」
『一緒に早歩きしてるのがツボに入った』
「…ぶっ 笑 ぶははは!笑」
並んで早歩きしながら話したりして
じゃあもう小走りで走ればいいのに、とか思ったりして。
それに歩いてる時は普通に手にぶらさげてたお漬物屋さんの紙袋を
早歩きするにあたって侑くんは胸に抱えていて
それがまたなんていうか、かわいくてそしてどこか滑稽で。
『その紙袋大事に持ってるね、お土産?』
「お土産ちゃうわ、脅迫されてん」
『…?』
「兵庫に帰るとうっさいのがおんねん」
『へぇ、そこのお漬物、わたしも好き。食べるのが好きな人なんだね』
彼女かな?
ご両親って感じじゃなかったし、
でもなんていうか愛のある うっさいの だった。
「…せやな。なんでもうまそうに食べんで」
『それは一緒にいて楽しいね。美味しそうに食べるのを見るのは幸せだよね』
「はぁー?ぜんっぜんそんなんちゃうわ、あいつの場合は。
そっちの方がからあげ大きいやないか交換せーだとか
お前プリン食ったやろ?とか、なんかちょっとやらかしてまうとすぐ食いもん奢らすし…」
『…うん、侑くんから好きが溢れてる』
「やから、ちゃうし!そんなんちゃうわ!」
『すきやすきやすきやすきや… って聞こえんで?』
「なんやそれ、いきなり関西弁真似すんなや!しかもうまいやんけ!」
『…笑』
「あーもう着いてもーた!」
『うん、じゃあ侑くん、元気でね。またもし、会うことがあれば!』
「マジで?そんなさらっと、ほなさいなら、ってすんの?」
…もしかしたら春高で、ってこともなくはないよね。
脱線も脱線っていう感じでそんな話には微塵もならなかったけど