第30章 rollin’ rollin’
久しぶりの丸の内。
6月の発表会の後、京治くんに会った時以来。
来週の日曜に京治くんに会う。
お誕生日は過ぎちゃったけど、せっかく部活以外で会うのだし
何かピンとくるものがあれば贈りたいなぁと思って探しにきた。
お互い好きな人がいるし、程よいものがいいなぁ。栞、すごく嬉しかった。
前にブックカバー渡してるし… 使い古しだけど。 …なにがいいかなぁ。
とりあえず、ショッピングモールに行くか…
そのあと京治くんと会った書店にも行こう。
そんなことを思いながら、一度、空を見上げる。
そういえば東京駅には美味しいカレーパンのお店があるんだった。
さっと行って影山くんに買ってくればよかったな。
…でもそんなのしたらせわしなかったとおもうし、これでいっか。
「ごめんな、待った?」
肩をとんってされて後ろから声がする。
わたしの聞き慣れた、待った?のイントネーションじゃない。
聞き慣れてるのは右肩下がり。
今のは、右肩上がり。
それにそもそも待ち合わせ、してない。
…人違い、ですよ。
そう思いながら振り返ると、にこぉと笑う金髪ツーブロックの人。
『…わ あれ、人違いです…よ?』
「んなもん、ゆーてみただけや。 俺らさっき一回会うたよなぁ?」
『うん、会った…? 目が、合った』
「そーそー!かわいい子やなぁおもて、思い出しながら歩いとったらまた会うてん。
そりゃ声かけるやろ?」
『…やろ?って言われても 笑』
「何してんの?」
『ちょっとぷらぷら』
「家この辺?」
『ううん、この辺ではないよ …えーっと』
「あぁ、俺あつむ!」
『あつむくん、…あつむくん? どんな字書くの?』
「人偏に有ゆーて書いて、あつむ」
『へぇ、侑。 いい名前。 思いやりとか助けるとかそういう意味だよね。
ちょうど昨日、漢和辞典で遊んでて、よく覚えてる』
「そーなん …つーか、漢和辞典で遊ぶってなに?」
『ぱらぱら〜ってして、へぇ…って』
「あーなるほど、ぱらぱら〜ってして、へぇ…ってね …ってわかるかい!」
『…笑 侑くんすごいね、なんでもない会話をこう、面白い方に持ってく力』
「いや、そーいうん要らんし。 居た堪れんわ、そない落ち着いて分析されるん」
…関西の人なのかな。
あ、そっかユース合宿。