第30章 rollin’ rollin’
…わぁこれ、まずいまずいまずい
避けなきゃいけないのに、身体が動かない
教えてあげるだの食べたいだの知らぬ間にあらぬことを一瞬でも想像した挙句、
結局、その真っ直ぐすぎる、衝動的な、本能的な行動により先に進んでしまうって…
ちょっと… 唆られる
手玉に取るつもりが、あれよあれよ…みたいな
そしてそれまでは多少強引でも乱暴でも、
あるところまでいくと、途端その器用さが顔を出して………
…って、バカ!
なんで影山くんにはいつもこんな妄想が働いちゃうんだろう…
もう少しで唇と接触、というところで影山くんの頭がずずっと動く
「ぷるぷる …うまそ」
目と目が大体同じ高さ?にあって、
そのまま近づいてきて
すこし顔を傾けたりして
唇と唇が重なる
っていうのが、さっきの状況でわたしが予想したこと
…え、それって別にわたしがやらしいからしちゃうやつじゃないよね?
普通、だよね?
今影山くんがしたのは、
そのままガクンと頭の角度が斜め下に傾いて
わたしの目線のまっすぐ先は影山くんの頭頂と背景になって
影山くんの目線のまっすぐ先はわたしの唇になった。
影山くんは、わたしの唇?口?を
触診、視診にて観察している。
研究対象か!笑
…ってそれもそれで唆られちゃうけど………
…ってだから、バカ!
…ていうか、うまそ。って言った?
もーやだ、ほんとこの天然の色気こわい こわいこわい
「…っつーか唇って」
影山くんはやや眉を顰めて、自分の唇に指を当てる
「いや、全然ちげーな」
『…笑 あぁ、拍子抜け あぁ、おもしろい』
「…なんすか?」
『いえ、なんでもないです』
「俺の唇、穂波さんのみたいに柔らかくねーっす」
『…そうですか。でもきっと柔らかいですよ』
「なんでわかるんすか」
『指で触るのと、唇で触るのはまた違うし…』
「唇で、触る?」
『…っ! なんでもないよ、今のは頭の片隅にしまっといて』
「…? じゃあ俺行きます。 今日はありがとうございました」
『うん、気をつけて帰ってね。烏野高校のみんなによろしく。
それからわたしもありがとう。楽しかった』
影山くんが東北方面への階段を登るのを確認してから
わたしも次の目的地へと向かう。